親愛なるニコラ・サルコジ氏へ---France3記者クラブより公式声明。

最近なかなか時間がとれなくて,とくにフランス政治・社会関連の記事の更新が滞ってしまってごめんなさい・・・。今日の記事は,パリ在住のフランス人の友人が教えてくれた,フランス国営テレビ局 France3( * 訳注①)の記者クラブ(ジャーナリスト協会)による公式声明文です。言論と表現の自由,そして報道機関の独立性を守り抜こうとする,誇り高きフランスジャーナリズムの真髄を見た気がしました。たとえば同じ国営テレビ局とはいえ,日本のNHK記者クラブが,次期首相がほぼ確実視されている現職大臣に向けてこんな声明を発表するなんて,想像できるでしょうか・・・?

『 France3記者クラブによる公式声明 』
2007/03/27付 原文より
---Communiqué de la société des journalistes de France3---

(※←リンク先の原文が削除されているようなので,リンク先を変更しました。)


ニコラ・サルコジは,すでにエリゼ宮( * 訳注:フランス大統領府のこと)の住人になった気でいるのだろうか?彼は,もうじきあらゆる権力を意のままにあやつる自分の姿を思い描いて,浮かれているのだろうか?

彼が,大統領選(第一回投票)における世論調査でトップを独走していることに陶酔しているのは疑いようもない。彼は,我々France3のテレビ局で,ちょっとした権力の発作を起こしてしまったようだ。その王様のような気まぐれぶりは時代錯誤も甚だしく,あの昔懐かしいORTF( * 訳注②)を想起させるほどである。

それは,あまりにも唐突で,いとも簡単に下された裁決だった。サルコジ氏は,我々テレビ局の経営陣を解雇すると脅しをかけたのだ。3月18日,彼がフランスユーロップエクスプレスの番組にゲスト出演する際,我々テレビ局の幹部らがレッドカーペットを敷いてお出迎えに駆け付けなかったのが,お気に召さなかったらしい。大臣であると同時に大統領候補であるこの人物は,テレビ局に着いたとたん,いくつかの無礼な言葉を吐いた後,この番組には”うんざりして”おり,番組に出演したくない,と言い出したのだ!
しかも,他のゲストたちが出演している間,メイクのためにテレビ局内の廊下で待たされと言って怒り出した。(そう,わがテレビ局にはメイクルームが1部屋しかないのだ)。この”サルコジ侵害罪”の被告人として,我々の経営陣が批判の矢面に立たされた。『 経営陣全てを解雇しろ 』と,国民運動連合(UMP)の候補者( * 訳注:サルコジのこと)が言い放ったのは,3月21日付のカナール・アンシェネ紙が報じた通りである。『 今すぐには彼らを首にすることは出来ないが,だからと言って,彼らは何も解雇されるのをのんびり待つことはない。どうせじきにそうなるのだから 』と。

この事件を機に,フランス国民は通告を受けたのだ。もしニコラ・サルコジが大統領に選ばれたなら,まず彼が最初にすることの1つは,テレビ局France3の経営陣の首を切る,ということを。彼にぺこぺこと頭を下げることを怠った幹部たちを引きずり降ろす,ということを。
我々デスク部は,この大臣兼大統領候補者が我々を決してこころよく思っていないことには慣れている。我々が彼に対してそれほど従順でないからだ。それは最近,あるジャーナリストに対してサルコジが,『 君のような左派ジャーナリストにとっては,わたしの言うことを理解するのもなかなか大変だろう?』と挑発したことにも表れている。彼は今度は,我々の上層部に狙いを定めたのだろうか?
最も強大な公的権力を有する大統領候補者( * 訳注③ )をがこのような態度をとることに,我々France3記者クラブは衝撃を受けている。我々は,サルコジ氏が何のためらいもなく,公共テレビ局の独立性を軽視することに憂慮している。

いいえ,サルコジ氏よ。国営テレビFrance3デスク部のジャーナリスト達は,決してあなたに卑屈に盲従するつもりなどないし,これからも決してないだろう。我々ジャーナリストは,我らの独立性を脅かす全てのものに耐えてみせよう。もし我々が責任を取る時が来るとすれば,それはあなたに対してではなく,毎日我々のニュースを見てくれている何百万もの視聴者に対してである。

視聴者に対する敬愛の念から,そして聡明なる視聴者のためにも,我々はいかなる政治的圧力も容認するつもりはない。あなたからの圧力も,そして,他のいかなる大統領候補者からの圧力も。

以上のことを,肝に銘じられますよう。

2007年3月23日, France3記者クラブ


*   *   *   *   *   *   *   *

 キーワード & 訳注 
*①France3
・・・フランスの国営テレビ局。(でも日本のNHKと違い民間企業のスポンサーがついているため,経済的には半分独立。それぐらいがちょうどいいのかな?)現在,フランス国内(またはフランス海外県など)で無料で視聴できる5つのテレビチャンネルのうちのひとつ。ORTF(訳注②参照)が生んだ3つめのテレビ局であり,フランステレヴィジオングループ傘下。
*②ORTF
・・・オー・エール・テー・エフ( Office de Radiodiffusion-Télévision Française )
1964年から1974年まで存在したフランスの国営ラジオ・テレビ放送局。前身となるRTFが当時の情報省の管轄下にあったのとは反対に,あくまで『 報道と言論の自由を保障された独立性の高い機関をフランスに 』,という期待のもとに生まれた。しかし,法令によって制定され,経済的にも国家に依存せざるを得なかった当時の国営放送局という性質上,ヴァレリー=ジスカール・デスタンやジョルジュ・ポンピドゥーなど,さまざまな政治権力の介入を許した。74年に解体後,現在のRadio France(さまざまなラジオ局を有するフランス最大の総合ラジオ放送局)やTF1(テレビ局,後に民営化),France2,3(国営テレビ)など7つの機関に生まれ変わった。

*③最も強大な公的権力を有する大統領候補者
・・・今回の12人の大統領候補者の中でも,サルコジはただの一候補者ではない。大統領候補であると同時に内務大臣でもある彼は,フランス警察の長でもあり総合情報局(RG=公安警察のようなもの)を自在に操るなど,絶大な政治権力を有する。内務大臣職と大統領候補を兼任することに対しメディアや他候補者たちからの 激しい批判を受け,3月末に内相を辞任している。

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