* フランス大統領選第一回投票の分析---ルモンド社説より(前半) 

* Un grand remerciement à qp de paris


さて,フランス大統領選第一回投票の結果は,みなさんの予想どおりだったでしょうか?フランス人の友人がパリの投票所で,今まさに投票しようとしている様子を写真に撮ってくれました。 お目当ての候補者名が印刷された紙を青の封筒に入れて,投票箱に入れるんですね!右に見えるのは有権者カードです。さて,第一回投票結果の分析として,まずはル・モンド紙の社主コロンバーニ氏による社説を紹介します。この方の社説は読み応えがあるのだけど,なにせとても長いので(泣),2回に分けてお送りしますね。今日は前半です。

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 『 二重の勝利
(前半)
ル・モンド社説 |2007/04/23付 | J.M.コロンバーニ著
"Double Victoire"  Le Monde | Édito par Jean-Marie Colombani

それは二重の勝利だった。民主主義それ自体の,そして,過激な政治思想(*訳注①)に対する勝利だ。フランスの歴史はこの4月の美しい日を記憶にとどめることだろう---晴れわたった空の下,老いも若きも,子供を連れた夫婦たちも,誰もが辛抱づよく投票の行列に加わり,すべての人が動員されたこの日を---。それは,平穏な国のイメージとともに,市民たちが政治を再認識し,大統領選に積極的に参加し決定権を行使することで,自らの運命をも手中に収めようと欲していることの表れだ。何度も交替した数々の政権に対して長年降り積もった不信や疑念,そして過激思想の上昇の後,我々はようやく,長く,混乱した,しかし同時に情熱的な選挙戦の終わりに近づいている。記録的な投票率,民主主義の大きな波,そしてロワイヤルとサルコジの勝利は,決勝投票が明確な選択の場であることを保障している。それはあたかも,2002年4月21日(*訳注②)の記憶を消し去るかのように。そして,フランスの未来が我々の意思に反して作られるなどと,もう誰にも言わしめないように---。

この第一の勝利は,フランスの美しい側面を浮かび上がらせている。すなわち,民主主義的で節度ある意思表明,(政治意識の)政権から政党への回帰,そしてルペン主義(ルペニスト)への傾倒の終焉であり,特に後者は4月22日における第二の勝利である。決選投票については---望ましいことではないのだが---力の均衡が圧倒的に右派に有利だという点では(第一回投票ほどには)開かれた投票とは言い難い。しかしそれでも,真剣で,そして何よりも希望に満ちた議論の場を提供してくれるだろう。

まず第一段階は,フランスという”国”そのものを復興させる,というよりは( 第一,フランスはまだ地に墜ちてはいない ),フランスのモラルを上昇させることにある。最も大衆扇動的な思想を排除し,”(シラク政権との)断絶”をうたう候補者(注:サルコジのこと)と”変革”を掲げる候補者(注:ロワイヤルのこと)を支持することで,フランス国民は自ら行動を起こす覚悟がある,と宣言したのだ。

フランソワ・フィヨン氏(*訳注③)は,不安に打ち勝つためには(すでに検討され,おそらく実現されるであろうが)フランスが自信を回復し,イデオロギーに取って代わって定着した否定主義を排除しなければならず,それこそがフランスの命題である,と述べている。『 楽観主義を取り戻さなければならない 』と説いたのはセゴレーヌ・ロワイヤルであり,『 国民ひとりひとりが成功できる世の中にする 』と宣言したのはニコラ・サルコジである。こどもたちが,自分たちの親よりも快適に暮らせる希望を持てるようにしなければならない。候補者ふたりはこれから15日間にわたり,自分こそが最良の選択肢であると証明すべく力を尽くすだろう。そのためにも両者は,中道派に正面から取り組まなくてはならない。

実際,この二者の決勝投票進出は,それぞれ極端な政治思想の犠牲の上に成り立っている。セゴレーヌ・ロワイヤルは,4月21日(*前出:訳注②参照)の(再来への恐怖から生まれた)強迫観念の恩恵を受け,極左と緑の党を圧迫した。ニコラ・サルコジは自らの賭けに勝ち,見事ルペンへの票を奪い取ったばかりか,ルペンの党がその影響力を失うまでに弱体化させた。この必然ともいえる現象は中道的政治思想への回帰を示しており,決選投票ではこれが最大の争点になるだろう。すなわち,第一回投票でフランソワ・バイルに投じられた票こそが,決選投票の勝敗を決するのだ。そしてそれは,この大統領選の矛盾である。なぜなら,議論が中道派に有利に展開するためには,その中道派自身が第一回投票で敗退する必要があったのだから。( → 後半に続く )


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 キーワード & 訳注 
*①過激な政治思想
・・・とくに今回の大統領候補であったルペンとド・ヴィリエが象徴する極右思想のこと。
*②2002年4月21日
・・・前回(2002年)大統領選の第一回投票日。シラク(当時の大統領)とリヨネル・ジョスパン(社会党・当時の首相)が決選投票に進むと誰もが信じていたが,ジョスパンがルペン(極右FN党)にまさかの敗北。シラクVSルペンの対決に持ち込まれた。ジョスパンは即日,事態の責任をとり,劇的な政界引退を表明。この予想外の展開にフランス全土は『 極右に政権を渡すな 』と立ち上がり,その恩恵にあずかったシラクはルペンに大差(82%)で圧勝し,大統領に再選された。( 以上,『 2007 フランス大統領選,分析と総評 』のキーワード欄より)
*③フランソワ・フィヨン
・・・国民運動連合( UMP / 与党 )の政治家。シラク大統領下,大臣職を歴任。もともとはシラク派だったが,当時の首相ラファランが国民投票におけるEU憲法否決の責任を問われ辞任したことに激怒し,以後サルコジ派に。今回の大統領選では,遊説先のサルコジに影のように寄り添う姿がメディアで報道されている。サルコジを支える綺羅星のごときブレーン達は,非常に有能で敏腕であると同時にしばしばアグレッシブな印象さえ与えるが,フィヨンの控えめで冷静沈着な態度はそんな彼らと一線を画している。フィヨンに対するサルコジの信頼は絶大であり,もしサルコジが大統領に選出されるならば,フィヨンを要職に就かせるのは(彼が辞退しないかぎり)ほぼ確実とみられている。

2 Comments

miskatonic  

うわ~。すごい!
こちらに来たら、きっとフランスの選挙のこと
詳しく書いてあるだろうな。
と思ってきましたが、すごいですね!
さすがです!
ゆっくり読ませていただきますね。

個人的にフランスの選挙には注目しているのですが
あまりこちらでは詳しい報道はされないですね(^_^;。

2007/04/26 (Thu) 20:45 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-275 to : miskatonicさん

わー!!miskatonicさんだ~i-221

こんなところに(汗)わざわざ来てくださって
ありがとうございます~。
でも,なんだか恥ずかしくて,ドキドキしてしまいます。。。
本家の方とはずいぶん違う方向に展開してますしi-230

確かに日本では,視点がどうしてもアメリカに向いてしまいますよね。
日本でフランスと言えば,お洒落な”フレンチ”イメージ先行型ですが,
実はけっこうドロドロで(笑)奥の深~いフランスの社会・政治問題には
学ぶところがあるのでは・・・と個人的には思ってるんですi-229

メッセージ,うれしかったです!
ありがとうございました~i-237

2007/04/27 (Fri) 00:38 | EDIT | REPLY |   

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