* ロワイヤルとバイルの戦略的婚姻契約

今やフランス一のモテ男,中道派フランソワ・バイル。(ただし,決勝投票までの期間限定。)バイルを口説き落とした候補がフランス大統領選を制する,とまで言われる今日この頃。1週間後に決勝投票で対決するサルコジとロワイヤルが,バイルにあの手この手でラブコールを送っている,と前回お伝えしました。ロワイヤルはバイル(の支持者)を引き込む作戦として,バイルに公開討論を提案。すっかりご機嫌のバイルさん。ひとり蚊帳の外に置かれたサルコジは,『 バイル(支持者)の票などなくても勝てる 』と,バイル票を過小評価し出す始末。・・・というわけで,今日はリベラシオン紙ディレクターで,その毒舌とユーモラスな表現で知られるロラン・ジョフラン氏の社説です。ちなみについ先ほど,フランス中が固唾を飲んで見守った『 サルコジVS.ロワイヤル 』のTV討論も,近いうちに記事をUPしますね。

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 『 婚姻契約 』
リベラシオン紙 | 社説 | 2007/04/26付 | ロラン・ジョフラン著
"Contrat de mariage" Libération | Présidentielle. Édito | Laurent JOFFRIN
たとえ一夜限りの関係だとしても,あとを引くアバンチュールもある。セゴレーヌとフランソワ( フランソワ・オランドではなく,フランソワ・バイルの方である )( * 注① )が踏み出した第一歩( * ロワイヤルとバイルによる一対一の公開討論 )は,ひとときの小説めいた出会い(のひとつ)であるが,それが成就することはないだろう。しかし,だからと言ってその出会いを侮ってはならない。なぜならその出会いは数年後,フランス国家を必然的に支配するであろう,前代未聞の体制をはっきりと予知しているからだ。

先日の日曜日( * 大統領選の第一回投票日 ),国民は,あの懐かしいフランスを再び見いだした気がしただろう。すなわち,”右派対左派”,”大政党のリーダーVS. バラ色,緑,赤( * 注② )の連合”の構図である。だが,それは間違いだ。なぜならベアルン県の扇動家(* フランソワ・バイルのこと)によって,この伝統的な政治的構図はあっけなく粉砕されてしまったからだ。確かに大多数の民主主義国の例にもれず,我々の国でもリベラリズムVS.民主主義的社会主義の図は議論として構築化されている。だが,バイルはその性質を変えてしまった。この大統領選後,社会党(PS)も,フランス民主連合(UDF)も国民運動連合(UMP)も全てが,もはや以前と同じではありえないのだ。

何はさておき,社会党内について率直に話そう。いまだ”左派連合”と呼ばれる,左派の伝統ある政治的連合は生き延びた。いずれにせよ,それは1971年にエピネー集会でフランソワ・ミッテランが発案した体制をベースに,リヨネル・ジョスパンとフランソワ・オランドによって確固たるものとなった。だが,今やハーレム状態の男(* バイルのこと )が言うように,”共産党と緑の党が2%以下の支持率で,どうやって左派連合が生き残れるというのだろう?” 社会党の中でもさらに左派の党員たちに危機感を抱かせ,彼らを行動に駆り立てる要因は減る一方だ。今回の大統領選で無傷で決勝投票に進出した社会党とは対照的に,虎視眈々と爪を研いでいたはずの共産党マリ=ジョルジュ・ビュフェはすっかりか弱くなり,緑の党の勇敢なるドミニク・ヴワイネの木は,いつのまにか小さな盆栽になってしまったではないか。フランソワ( フランソワ・バイルではなく,フランソワ・オランドの方である )は,セゴレーヌにこう言ってため息をついたかもしれない。”ダーリン,左派をずいぶん小さくしてしまったね!”( * 注③ ) と---。 だが,それは事実だ。たとえジャン=リュック・メランション( * 注④ ) ---いつまでも引退しないこの大御所政治家の頭の中では,現実が脳に認識されるまでにずいぶん時間がかかるようだ---が何と言おうとも,社会党は中道左派へ転換し,その本質である改革主義を押し進めざるを得ないのだ。

ここで登場するのが,この政略結婚の用心深いフィアンセ,もてもてのバイルである。彼によれば,中道派は必ずしも右派の補充的役割を果たす義務はない。つまり中道派はよそで恋人を探してもいいのだ。ニコラ・サルコジはプリプリしながら,指をくわえて恋人たち(* バイルとロワイヤルのこと )を眺める他ないのだ。バイルに歩み寄ったのは,左派の皮肉屋たちの中では最も政治的戦略に長けたセゴレーヌ・ロワイヤルだ。彼女の推定上の夫であるバイルは,ウィとは言っていない。だが,ノンとも言わなかった。すなわち,それが答えだ。バイルは2つだけ条件を付けた。むやみやたらに政治権力を介入させないこと。そして,国の負債についてより賢明な策を講じること。一体,社会党の中で,この(魅力的な)婚姻契約を拒否できるレディーなどいるだろうか?近代的社会主義が,あらゆる分野に公権力の介入を許すものではないことは明白だ。まずは,効率的な公共業務を遂行すること。そして,国家を無限大に巨大化するのではなく,国家自体を改革することが必要なのだ。国家の負債に関しては,数年前にロラン・ファビウスが宣言したように,赤字イメージの左派と決裂せねばならない。

いずれにせよ,社会党がイデオロギー変革を遂げるためには,新たなリスクを冒すことを恐れてはならない。おそらく(社会党の)大御所政治家たちは金切り声をあげて反対するだろう。それでもこの政治的大変動は,フランス政治の近代化を願うすべての人々---たとえ彼らがバイルを支持した者であろうとも,ロワイヤルに票を投じた有権者であろうとも---の期待に応えるものである。

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さて,このロワイヤルとバイルの討論は,さまざまな難関や制約を乗り越えて先日,無事に実現されました。結果的には,ロワイヤルとバイルは協調路線を見いだすことが出来ず,平行線のまま。ふたりの政策の違いが改めて鮮明になりました。しかし,この前代未聞の左派VS.中道派の公開討論は,オープンで率直な議論を歓迎するフランスにはおおむね好意的に受けとめられたようですね。(ただしサルコジ陣営以外。)

 キーワード & 訳注 
*①2人のフランソワ
・・・フランソワ・バイルは中道派UDFの党首であり,今回の大統領選において名実ともに『第三の男』となった。フランソワ・オランドは社会党第一書記(党首)であり,社会党公認の大統領候補セゴレーヌ・ロワイヤルの夫です。
*②バラ色,緑,赤
・・・バラ色はバラの花をシンボルとするフランス社会党,緑は左派『 緑の党 』,赤はフランス共産党をそれぞれ指す。
*③”ダーリン,左派をずいぶん小さくしてしまったね!”
・・・アメリカ映画”Honey I Shrunk The Kids”( 邦題:ミクロキッズ )のフランス語タイトル” Chérie, j'ai rétreci les gosses ”をもじったフレーズ。
*④ジャン=リュック・メランション
・・・Jean-Luc Mélenchon / 社会党(PS)の政治家,元老院議員。社会党の中でも,より左派に位置する。EU憲法批准における(フランス国内での)国民投票の際,社会党の指示に反して”NON”を唱え,共産党や極左LCRと一時的な共同戦線を張った。今回の大統領選では,党公認の大統領候補者は『 EU憲法批准に反対した政治家が選ばれるべきだ 』として,ロラン・ファビウスを支持。ちなみに,記事内でジョフラン氏が彼を『 頭の中で現実が脳に認識されるまでずいぶん時間がかかる 』と揶揄したことに対し,即刻自分のブログで” 暴言だ ”と反撃している。

2 Comments

ヒコ  

そぉかぁ、共産党と緑の党を合わせても2パーセント以下なんだ。時代は変わったね(>_<)頑張れロワイヤルお姉さま!

2007/05/03 (Thu) 22:49 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-259 to : ヒコさん

ほんと、とくに今回は
ロワイヤルさん陣営以外の、左派の弱体化がいちじるしいですね!

先日のサルコジVS.ロワイヤルの公開討論では
攻撃的なロワイヤルさん、沈着冷静なサルコジさん、と
お互いになかなかの役者ぶりでしたねi-278

明日の大統領選(日本時間ではあさって、ですね)がほんとうに楽しみです~。

2007/05/05 (Sat) 18:46 | EDIT | REPLY |   

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