*最後の戦い --- サルコジVS.ロワイヤル,TV公開討論(後半)


前回の続きです。ふたりの最初で最後の対決。大統領選の最終結果が出る前に,今回の大統領選のおさらいも兼ねて・・・。この前代未聞のTV討論は,両者一歩も譲らず,迫真に満ちた議論でした。特にいつもは”守り”のロワイヤルさんが,非常にアグレッシブでサルコジを激しく攻撃したのには,みんな仰天したようです。対するサルコジさんは,これまたいつもの過激で攻撃的なイメージから一転,終始冷静でおだやかな態度に徹し(←ほとんど,あなた誰?状態です),お互いに『 自分こそがフランス大統領のうつわだ! 』と言わんばかり。ちなみに今回の記事はあくまで議論の概観を描写したものですので,議論の細部までは言及されていません。また,分かりにくい部分については議論の発言の全文スクリプトを参考に,本人たちの実際の言葉で付け足しました。

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 『 ロワイヤルVS.サルコジ,ブラウン管の中の戦い(後半) 』

リベラシオン紙
| 2007/05/03付 | 政治部

"Ségolène Royal en croisée cathodique" Libération |Service Politique
( * 前半からの続き )

ロワイヤルは攻撃の手をゆるめず,今度は最近起こった事件を採り上げた。勤務を終えた婦人警官が帰宅途中に暴行された事件である。『 昨年,ちょうど同じ場所で別の婦人警官が襲撃されました。その事件から今回の悲劇までの間,サルコジ氏はどんな対策を講じたというのでしょう? 』 相手に答える暇さえ与えず,ロワイヤルは続けた。『 婦人警官が夜遅く勤務を終えて帰宅する際,自宅まで警護を付けることを提案します。 』 そしてロワイヤルの話は公務員全体に及んだ。『 あなたは国民に”公務員を2万5千人削減する”と約束したけれど,(このような状況下で)一体どの公務員を解雇するおつもりですか! 』 サルコジは激昂した相手に驚きながらも,皮肉を込めて切り返した。『 つまりあなたは,2種類の公務員が必要だとでもいうのか?一方は,公務に従事する国民のための公務員,そして他方は夜遅く帰宅する公務員のための公務員,とでも? 』

ロワイヤルは再び国の借金(長期債務残高)に話を戻し,負債を減少させるために経済成長2,5%を目標に掲げるとした。そしてさらに 『 病院での採用ポストを増やし,地方ではもっと近距離範囲内に病院を配置すべき 』 と主張した。饒舌なロワイヤルに対し,国民運動連合の候補者は 『 マダム,あなたがあれもこれもと欲張ってあらゆる問題を論じるから,いい加減なアプローチになってしまうんですよ 』 と皮肉った。対する社会党の女性候補者は 『 わたしはそれぞれの問題に,きちんと責任を持って発言しているのです 』 と高慢に切り返した。サルコジは 『 わたしは何もあなたを非難しているのではなく,ただ忠告してあげているだけで・・・ 』と言ったが,ロワイヤルは 『 いいえ,それどころかわたしの言っていることはきちんと筋が通っています。 』 サルコジはさらに,『 あなたがそんなふうにあらゆることを一度に話そうとするから,我々は議論を深めることができないんですよ 』 と続けたが,彼女は 『 いいえ,わたしの話はすべて首尾一貫しています。長期負債残高を減らすことと,経済振興は両立できるのです 』 と譲らなかった。

争点は再び公務員の数に戻った。ロワイヤルは,『 私は公務員の数を増やせとは言っていません 』 と反論。『 公務員を必要なところに再配置すべきだと言っているんです。たとえば公務員が退職する際,入れ代わりに入国審査官を雇うのではなく( * 注① )看護婦を雇うべきだと言っているんです 』 そのときサルコジが口を挟んだ。『 いいえマダム。そんなことは不可能です 』 するとロワイヤルは切り替えした。『 あら,不可能ですって? ご冗談を!それが出来ないなら,あなたはなぜ最高権力を手に入れたいというのです?わたしなら,きっとやってみせます 』

話が失業対策に及ぶと,ロワイヤルは週35時間労働法( * 注② )の”二番目の法律は柔軟性に欠けるものだった”と認めつつ,自らすすんで話し出した。35時間法を一般的に広く適用する前にまず,『 労使代表同士がケースごとに個別に交渉して決めるべきであり,もし労使間で合意が得られないならば,現状を維持すべき 』 と主張した。サルコジが 『 つまり35時間法を一般化するのかしないのか,どちらなんです? 』 とたたみかけると,『 35時間法があらゆる悪の根源であるかのように言うのはやめてください 』 と,ぴしゃりと言った。『 35時間法は大切な社会的既得権なのですから 』

ロワイヤルはフィヨン法が定めた退職年金の条項について,女性が置かれている不平等な状況を改善するためにも”抜本的に再検討すべき”と主張した。サルコジが口を開きかけたとたん,恐れを知らないロワイヤルは大胆にも『 わたしの話を途中でさえぎらないで! 』と,サルコジを黙らせた。しかし,この議論の主導権を握っているのは自分だと自負しているサルコジは,共和国的な威厳でもってロワイヤルをたしなめた。『 退職年金を政治闘争の題材にするのは感心しませんね 』(中略)

環境問題についても,議論はさらに白熱した。とくにEPR(ヨーロッパ型加圧水炉)( * 注③ )について,ロワイヤルはサルコジを批判し,『 あなたは( EPRの基礎知識に関して )ずいぶん混同しているようですね。これほど技術的に高度な問題に対して,あなたの取り組み方はあまりにもいい加減です。もう少しお勉強なさっては? 』(中略)

議論は終幕に近づいた。サルコジは,『 私はあなた方国民を失望させはしない。あなた方を裏切らない。あなた方に嘘をつかない。 』 と締めくくった。ロワイヤルは,『 私はフランスのために尽くしたい。 』 と述べ,国民に対して,女性大統領を選出するという”勇気ある決断”を呼びかけた。

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 キーワード & 訳注 
*①『 入国審査官を雇うのではなく 』
・・・移民受け入れに寛容なロワイヤルが,厳格な移民対策を推進するサルコジを皮肉った言葉。
*②週35時間労働法
・・・当時首相であったリヨネル・ジョスパン(社会党)内閣下,マルティーヌ・オブリ雇用促進大臣によって制定。1週間の合法的な労働時間を35時間に短縮することで,雇用を促進するのが目的。ただしこの法律は自由業には適用されない。
*③EPR(ヨーロッパ型加圧水炉)
・・・European Pressurized Reactor の略。第3世代の新型原子炉コンセプト。原子炉基数の多いフランスで,将来的に電力をさらに原子力発電に依存するのか( サルコジ ),安全面を重視して自然エネルギーに比重を移していくのか( ロワイヤル ),両者間で議論が白熱した。特に,EPRが第3代世代なのか,それとも第4世代なのか,激しい舌戦が繰り広げられた。( どっちでもいいんじゃ・・・とツッコミたくなったのはわたしだけでしょうか? )結果的には”第3世代”を主張したロワイヤルが正しかったが,この議論が生放送でフランス全土に中継されている最中に,フランス版ウィキペディアのEPRのページが何度も書き換えられた形跡があり,『 討論中のサルコジの発言が正しかったかのように操作されたのではないか 』,とリベラシオン紙が指摘している。EPRについてはこの他にも技術的な知識や数字について両者が激しく対立。その後メディアが検証した結果,ふたりともほぼ半分ずつ間違っていたのだとか。

8 Comments

ちぇぶ  

日本のニュースでも話題になってましたね、この討論会。
のちほどゆっくり読ませてもらいます!!

2007/05/06 (Sun) 23:00 | EDIT | REPLY |   

はるえ  

はにぃのお蔭でフランスの政治にだけすこーし
詳しくなった私^^;
いよいよ結果が出るね~。やっぱりサルコジさんかな?
個人的には女性大統領がいいけど。
それにしてもポスターとか日本とは比べ物にならないくらい
お洒落で格好良くて素敵だよね~くらくら

2007/05/07 (Mon) 00:56 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-258 to : ちぇぶさん

ちぇぶさん,こんばんは~!

日本でもこの公開討論,けっこう報道されてますよね★
ほんと,ロワイヤルさん,すごく迫力ありましたよi-277
サルコジさんの皮肉も手厳しかったです!

記事自体はいつもの社説よりは読みやすいかと思います。
大統領選の結果,やっぱりドキドキですね(^-^;)

2007/05/07 (Mon) 01:36 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-275 to : はるえちゃん

うあ~はるえちゃんだ!

フランスの政治関係の記事も読んでくれていたの!?
うれしいような,恥ずかしいような・・・i-277
てゆーか,だーりんがドン引きじゃないかと,それだけが心配です~T-T。

わたしも,ロワイヤルさんの方が弱者にやさしい政策をとってくれそうなので,
ロワイヤルさんをひそかに応援してますi-265

ポスター,うんうん。
確かにビジュアルに凝っていてきれいだよね(^-^*)

2007/05/07 (Mon) 01:41 | EDIT | REPLY |   

ちぇぶ  

サルコジさん当選しましたね!!!

2007/05/07 (Mon) 08:20 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-40 to : ちぇぶさん

ちぇぶさん,こんばんは!

やっぱり・・・やっぱり・・・というかんじです(T-T)

サルコジさん式のフランスがどんな国になるのか,
このブログでも見守ってゆきたいと思ってますi-265

2007/05/08 (Tue) 00:27 | EDIT | REPLY |   

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2007/05/08 (Tue) 01:48 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-257 to : 帰国間近さん

帰国間近さん,はじめまして。
フランスからコメント,ありがとうございます。

帰国間近さんは,サルコジさんを応援していらしたのですね。
このブログではなるべく中立の立場を取ろうと思っているのですが,
わたしがサルコジさんが苦手なので
ついつい,サルコジさん批判の記事にかたよりがちかもしれません。
不快に思われたらごめんなさい・・・。

でも,サルコジさん派の人にもいろいろご意見を伺って勉強したいので,
どんどん聞かせてくださいね。
(プライベートメッセージじゃなくてもぜんぜん大丈夫ですよ)

サルコジさんは,わたしも
『 有言実行 』の人だと思います。
まあ,その実行の内容が,賛否を生むわけですが。。。

ロワイヤルさんは今回,
やはり一貫性に欠けるというか,ブレが目立ちましたね。
その辺が素人っぽい,といわれる所以なのでしょう。
ただ,そのイメージ以上に彼女は非常な野心家ですし,
政治家としても侮れない功績を残していますので,
彼女のこれからの活躍に注目したいと思っています。

あの公開討論は,サルコジもロワイヤルも,
お互いに“役”に徹していましたね。
激昂してみせた彼女に対してサルコジが,穏やかな笑みさえ浮かべて
『 仮にも大統領を志す者がそんなに感情的になるのはいかがなものか 』
と苦言を呈したときは,うぬぬ,やるな!というかんじでした(笑)。

貴重なご意見,どうもありがとうございましたi-265

2007/05/09 (Wed) 22:14 | EDIT | REPLY |   

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