* サルコジ新大統領,そしてフランスの言論・思想の自由

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『 サルコジが大統領選に勝利した夜,バスティーユ広場に集まったアンチ・サルコジ派の若者たち 』
( * プラカードに書かれた言葉→ * 訳注① )


さて,マルタ島のバカンスから帰ってきたサルコジ氏はただ今,ベルサイユの仮オフィスに閉じこもって組閣に取り組んでいるまっ最中。今まで何かと話題の多かったサルコジ夫人,セシリアさん( * 訳注② )もすったもんだの末,表向きは新・大統領夫人としての役割をしっかり果たしているよう。『 ジュルナル・デュ・ディマンシュ(Jounal du Dimanche)が,セシリアが決選投票を棄権した事実を掴んでいたにも関わらず,上からの圧力により発禁処分にした 』,と一部のフランスメディアが伝えているように,実は今,多くの大手フランスメディアではセシリア情報にかん口令が敷かれているのです。(サルコジ氏がフランスの多くの大手メディアに絶大な影響力を持っているため。)また,サルコジ氏が大統領に選出された夜から,バスティーユ広場(パリ)やマルセイユなど,フランス各地でアンチ・サルコジ派による暴動が起きているけれど,フランスの一部の大手メディアはこの事実をなるべく報道しないようにしているようです。(もちろん,報道による暴動の飛び火を防ぐ目的もあるのかもしれませんが・・・)暴動に加わって検挙された若者たちは今,裁判所で続々と判決が下されている最中。中でもリヨンでアンチ・サルコジ集会に参加したグランゼコールの学生たちに対し”警官に暴力を振るった”として(本人たちは一部否定)には,それぞれ執行猶予なしの2ヶ月または3ヶ月の実刑判決が確定。前科のない若者たちに対する,この例外的に厳しい”模範的”判決を,一部のメディアが糾弾。

言論と表現,思想の自由を余すことなく謳歌していたはずのフランスが大統領戦後,なんとも奇妙な雰囲気に包まれているようです。

そんな中,大統領選に敗北し,あいかわらず最大野党に甘んじたフランス社会党(PS)は再び内紛の危機。ここにきて改めて確認されたのは,大統領選の敗因は決してロワイヤル個人の能力不足だけではなかった,ということ。つまり今回の大統領選では,社会党内では大物政治家(いわゆる”エレファント”( * 訳注③ )と呼ばれる人たちです)が,嫉妬やエゴ丸出しで,何かにつけてロワイヤルの足を引っ張り,党の『 結束 』どころではなかったのです。社会党という枠を超えて知名度の高いエレファントたちの協力を得られず,孤独な戦いを余儀なくされたロワイヤル。

実は,ロワイヤルの旦那さまであるオランド第一書記(党首)でさえ,大御所エレファントたちとロワイヤルの板ばさみになり,彼らに配慮するあまり妻を積極的に(少なくとも公的には)支援できなかったよう。ロワイヤルのスポークスマンの一人,アルノー・モントブール氏( * 訳注④ )は大統領選中,TV番組にゲストで招かれた際,『 ロワイヤルにはたったひとつの欠点しかありませんよ。それはね・・・彼女の夫です 』と爆弾発言。一瞬固まった場内の雰囲気に,さすがに”しまった”と思ったのか,『 ウケると思ったのだけど 』とフォロー。しかし時すでに遅し。党から”なんて不謹慎な!”とスポークスマン職を1ヶ月間解かれるお仕置きを受けました。でも今になって思えばモントブールは,誰よりもロワイヤルを助けてくれるはずの党首の不甲斐なさを,ひそかに怒っていたのかもしれませんね。党が擁立した大統領候補(ロワイヤル)が身内からバッシングを受け続け,結束力を欠いた社会党。それにくらべてサルコジは,自身の強力なリーダーシップのもと,党をガッチリと団結させ(意地悪く見れば,恐慌政治かもしれないけれど・・・)自分の政策を絶対に批判させなかった手腕は見事。

ちなみに,サルコジの新内閣にはなんと,社会党の人気政治家ベルナール・クシュネールが外務大臣ポストに?・・・という憶測が流れています。そして,フランソワ・バイル率いるフランス民主連合(UDF)のスポークスマンとしてメディアへの露出度の高いエルヴェ・モラン氏も大臣候補に。これが本当なら,左派と中道派をそれぞれ取り込んだ内閣づくりは,左派や中道派のアンチ・サルコジ派に配慮した懐柔策,もとい,サルコジ氏が言うところの”開かれた内閣”なのでしょうか。いずれにせよ,新大統領によるこの政治的戦略は,現在非常にフラジャイルな状況下にある社会党の亀裂をさらに深め,バイルの中道派をも分裂させる可能性大。サルコジ氏がその影響を知らぬはずはなく,それさえも計算に入れた上での今回の新内閣構想かもしれませんね。

・・・今日は社会党(PS)の内部分裂の記事をアップするはずだったのですが,まずは前置きで今フランスで起きていることをお知らせしたくて,ダラダラ綴っていたら・・・こんなに長くなってしまいました。実は上記,すべて『 前置き 』のつもりだったんです・・・。というわけで記事の訳は次回に回しますね。


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 キーワード & 訳注 
*①プラカードに書かれた言葉
・・・意味は,『 サイテーな国のためのサイアクの大統領 』というかんじです。ほんとうは大文字で書かれた言葉はスラングで(フランスではおなじみですが・・・),もっともっと挑発的なスローガンなのですけど,こちらでは自粛しますね。。。気になる方は辞書で調べてみてください。
*②セシリア・サルコジ
・・・モデルを経て,元老院(セナ)議員付きの秘書に。テレビの有名司会者と結婚後,サルコジ夫妻と家族ぐるみの付き合いが始まった。恋に落ちたふたりは互いの離婚を経て再婚。サルコジ,セシリアともに前配偶者との間に子供が2人ずついる。(ふたりの間には子供1人。)以後,セシリアは”女サルコジ”の異名をとるほど,サルコジの政治活動を強力にバックアップ。以前はテレビにも積極的に出演して夫を支援,ギニョール(マリオネット風刺番組)ではセシリアのキャラクターも作られるほど。恋人と駆け落ちするなど,自由奔放なサルコジ夫人の生き方はフランス国内や海外メディアでも報じられてきたが,2007年の大統領選以降,多くのフランスメディアではセシリア情報が事実上タブーとなり,”フランスのジャーナリズムの独立性,言論・表現の自由が権力によって抑圧されているのでは?”と一部指摘されている。その他の情報については,過去の記事の最後の方に書いています。
*③エレファントたち
・・・このブログにもそろそろおなじみの言葉ですね。フランス社会党の大御所政治家を指します。実力,知名度ともに抜群のツワモノぞろいのエレファントたちの一部は何年も前から大統領選出馬に向けて準備しており,8ヶ月足らずの準備で国民的人気者になったロワイヤルを快く思っていないようです。
*④アルノー・モントブール( Arnaud MONTEBOURG )
・・・社会党議員,大統領選中,セゴレーヌ・ロワイヤルのスポークスマンを務める。『 社会党の白馬の騎士 』,『 社会党のプレイボーイ 』,『 社会党の煽動家 』など数々の異名を持つ。大御所エレファントたちに対する毒舌でも有名。ロワイヤルの夫,オランド社会党書記長(党首)と仲が悪いのは周知の事実。大統領選中はTVの討論番組で,サルコジの有能な女性スポークスマン(大臣候補のひとり。移民・国籍省大臣か?)ラシダ・ダティ( Rachida DATI )と一対一で論戦を交わしたが,論理的でブレのない彼女の前に,モントブールは論点をずらすなど,たじたじ。人材の点でも,与党(国民運動連合=UMP)は社会党に勝るようです・・・。

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