* (ル・モンドから見た) サルコジの新内閣 

photo by © Le Monde.fr

ニコラ・サルコジ新大統領
                  
斬新で寛容?それとも深遠なる陰謀?
サルコジ大統領の新内閣は大方の予想どおりだったとは言え,その大胆な組閣は,やはり様々な憶測を呼んでいるようです。まず,最大野党(社会党)の人気政治家であり,”国境なき医師団”の創始者であるベルナール・クシュネール(元保険相)が外務大臣に。もちろん,社会党のオランド党首は激怒し,クシュネールを除名処分する予定 。次に大統領選で『 第三の男 』として頭角を現したフランソワ・バイル率いる中道派(フランス民主連合)の副議長兼スポークスマン,エルヴェ・モラン氏が国防大臣。そして,最も波乱万丈の政治人生を歩んできたと言えるのがアラン・ジュペ。かつてシラクの最も忠実な影であり腹心であった彼。その功労が報われ首相,与党党首にまで上り詰めたものの,シラクの罪を被る形で有罪判決(14ヶ月,1年の執行猶予,1年間の被選挙権剥奪)を受け,フランス政界から抹殺されたかと思いきや,新境地を求めて渡ったカナダから帰国,古巣ボルドーで再び市長に返り咲き,今回はなんと,サルコジが新設した”スーパー大臣”(環境相+開発相+国土整備相+財務省の部分的権限)に抜擢されました。すごい強運!
 さて今回は,同日に同じテーマについて書かれたル・モンド紙とリベラシオン紙の社説を比べてみたいと思います。まずはル・モンド紙から。ちなみに13年間にわたりル・モンドに君臨したジャン=マリ・コロンバーニ社主(こちらでも何度か紹介していますね)は3期目の信任投票でジャーナリストから60%以上の信任を得られず,解任される模様。他のニュースとしては,社会党のオランド書記長が次回の党大会でトップ続投を辞退することを表明。

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 『 魅惑するか,壊滅させるか 』
  ルモンド紙 | 社説 | 2007/05/19付
"Séduire ou réduire" Le Monde | Éditorial

ニコラ・サルコジ大統領の新内閣は,劇的な変化をもたらした。彼はあらゆる点において,前任者(シラク)と決別するつもりのようだ。ジャック・シラク前大統領は警戒心が強く,自分の身内や側近,派閥だけを信頼していた。だがフランス共和国の新しい大統領はそれと正反対のアプローチをやってのけた。彼は自信に満ち,伝統を打破することも政治的な境界線を越えることも恐れてはいない。

サルコジ氏はコンパクトで力強い内閣を望んでいた。彼の賭けは,フランソワ・フィヨン(首相)を中心に15人の大臣を任命することでほぼ達成されたと言えよう。しかし(政治家個人の)能力や野望,忠誠心の複雑極まりないバランスを取るためにも,すでに4人の政務次官と1人の高等委員を追加している。彼は(大統領選挙中に)男女同数の大臣から成る内閣を予告していた。それはほぼ遂行されている。内務大臣(*注①)と国璽尚書(法務大臣)(*注②)を含む7人の女性大臣を任命した。リヨネル・ジョスパン(元首相,社会党)は1997年に女性大臣への道を開いたパイオニアだった。そして今,右派がその道を完成させたという事実は意義深い。

サルコジ氏は改造と革新を体現するためのチームを欲していた。新世代の出現は顕著だ。新しく法務大臣に任命されたラシダ・ダティ(*注②)然り,”エナルク”( * 国立行政学院=エナ出身 )の政治家がほとんどいない(2人のみ)ことも象徴的だ。国家機構の再検討については,大統領選挙中に謳われた”ビッグバン”ほどの変革には至っていない。だが,今まで財務省が独占していた権限の半分を移譲された環境省など,いくつかの”融合”政策はすでに始まっている。環境省については今後,その活動について入念に検証する必要があるだろう。

だがこれらの特徴よりもまず,総選挙1ヶ月前の今,フィヨン政権は恐るべき政治兵器なのである。昨日まではフランソワ・バイルの副官だったエルヴェ・モランを味方に付けたばかりではなく,左派の4人の著名政治家をも魅了した。ベルナール・クシュネール(世論で圧倒的人気を誇る”フレンチ・ドクター”),ジャン=ピエール・ジュイエ(オランド&ロワイヤル夫妻のプライベートな友人),マルタン・イルシュ(貧しい人たちの良き相談相手),そして裏切り者のレッテルを貼られたエリック・ベッソン(*注③)である。

フランソワ・バイルは,党派の境界を越えて政治的に協力し合う重要性を説いていた。ニコラ・サルコジは今まさに,それに着手しようとしている。社会党員たちは,この”嘆かわしい”スカウトに激怒しているが,それでなくても社会党はすでにデリケートな状況にある。社会党内では,大統領選敗北を引きずり悪循環に陥っている党に見切りをつけ,他の党に移る方がましだ,と思っている政治家も少なくない。つまり,サルコジ大統領は一方を魅了することで,他方を壊滅に導こうとしているのは明らかだろう。彼が今後(総選挙時にあたり)その推進力をさらに強力に活用し,国会で最大多数の議席を獲得すべく突き進むのは確実だ。あとは実行に移すだけである---それはまた別の話だが。

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・・・ル・モンド紙の社説もずいぶん丸くなりましたね。ちょっとほめ過ぎ!(ル・モンドの大株主ラガルデールグループの総帥がサルコジ氏の親友だということも関係しているのでしょうけど・・・)シラクの最も忠実な腹心だったジュペやMAM ,バシュロを再び内閣に抱き込んでいるのに,『 サルコジ氏はあらゆる点でシラク前大統領と決別するつもりだ 』なんて,変。。。それにしても,コロンバーニ氏の社説はもう読めなくなってしまうのでしょうか?次回は『 リベラシオン紙から見たサルコジ新内閣 』です。

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 キーワード & 訳注 
*①内務大臣( ミシェル・アリオ=マリ / Michèle Alliot-Marie )
・・・”シラキアン”(シラク派)であり,シラク大統領の下で女性初の国防大臣を務めてきた,略称MAM(マム)。シラクの忠実かつ”有能な小さな兵士”とも称された。今回,シラクの政敵であるサルコジが与党,国民運動連合(UMP)から大統領候補として立候補する際,党内で唯一,サルコジの対抗馬として目されていたのがMAM。党が党首サルコジ擁立でほぼ結束していたため,彼女は一時,党外からの出馬の可能性も模索していたが結果的に断念。ところがサルコジ新大統領の下で彼女は内閣に留任したばかりか内務大臣に昇格。二人の間に密約でもあったのでしょうか・・・?
*②法務大臣( ラシダ・ダティ / Rachida DATI )
・・・マグレブ系移民(モロッコ人の父とアルジェリア人の母)二世である彼女は,郊外の低家賃集合住宅(HLM)で育ち,学生時代には看護士補助として昼夜働きながら苦労して学業を修める。受任裁判官(裁判官から任命される)や検事代理を務めた後,今回の大統領選ではニコラ・サルコジの若く(43才)有能な女性スポークスマンとしてメディアや様々な方面で活躍,一躍注目を集めた。サルコジに勝るとも劣らない隙のない攻撃的な論戦ぶりと上昇志向は,すでにル・モンド紙他から『 サルコゼット 』(女版サルコジ)と呼ばれるほど。

*③エリック・ベッソン( Eric BESSON )
・・・社会党の幹部であり,大統領選ではセゴレーヌ・ロワイヤルのもとで選挙対策チームの一員であったが,ロワイヤルとの”意見の不一致”を理由に社会党から離脱,ロワイヤルを公に批判。『 政界から引退する 』と宣言していたにも関わらず,サルコジが第一回投票を一位で通過したとたん,サルコジ陣営に加わる。晴れて大統領に選出されたサルコジからまさかかの政務次官に抜擢された。今の社会党の惨状を見るにつけ,彼はたとえ社会党や支持者から『 裏切り者! 』と罵声を浴びせられても,『 さっさと社会党を見限ってよかった~! 』と思っているかも?

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