* リベラシオン紙から見たサルコジの新内閣 ( とゾウさん )

Illustrated by Serge Bloch, from Rue 89

『 どうして社会党のエレファントばかり話題になるの?与党にも,年寄りエレファントたちはいるのに 』
( * ”エレファント”は,社会党の大御所政治家のこと。めがねゾウさんは,社会党のオランド書記長です・・・)

日本では松岡農林水産大臣の自殺で,安部首相の任命権責任を問う声や来たる参院選挙への影響の懸念が高まっているけれど,きっと新サルコジ政権下では現職大臣の自殺など,まずあり得ないんだろうなあ・・・と思ってしまいます。サルコジなら,野党からの激しい追求に満足に答えられない疑惑にまみれた大臣など,間髪おかずに切って捨てるはず。フランスで記憶に新しいのは,2005年のシラク政権下で財務大臣だったエルヴェ・ゲマール氏。財務大臣用の官舎を贅沢に改築し,(家族の数に対して)広大すぎる床面積を非難され,大臣就任後たった3ヶ月で辞任を余儀なくされた,短命大臣。それに対して日本では,官製談合や議員事務所の光熱水費の架空計上疑惑などの渦中にいた大臣を,それでも内閣にとどめ置き,自殺という悲劇的結末を招いてしまった首相・・・。
さて,前回はル・モンド視線で眺めたサルコジ(もといフィヨン首相の)新内閣を,今日は”リベラシオン視線”で見てみたいと思います。リベラシオン紙の記事はユーモアやアイロニーに満ちた表現や比喩,言葉遊びが好んで使われるので,なるべくそのままに訳しています。でも,なんだかなぞなぞみたい?(分かりにくいときは下段の訳注を参考にしてみてくださいね。)全く同じテーマについて同日に書かれた,前回のル・モンドの記事と比べながら読むと,面白いかもしれません。

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 『 見た目重視 』
リベラシオン紙 | 社説 | 2007/05/19付 | ルノー・デリ氏 著
"Cosmétique " Libération | Éditorial | Renaud DELY

よそからツバメが4匹やってきたからと言って,春---柔軟性に富んだ政治---になるわけではない。( * 注① )。だが,4匹のツバメの到来は間違いなく右派の春を確約し,反対に左派を長い冬へと引きずり込むだろう。

現在ニコラ・サルコジ氏は,(6月の)総選挙に向けて対策を練っている。今回の組閣は,左派をさらに混乱に陥れることを目的としているに他ならない。それは総選挙で大統領陣営が最大限の議席を獲得するための策略であり,大統領はあいかわらず(存続危機にある)エアバス社員の救済を強調している。サルコジ氏のこのやり方は,フランソワ・バイル(中道派)が夢見た”国家連合”とは何の関係もなければ,セゴレーヌ・ロワイヤルが大統領選の第一回投票と決勝戦の間に大急ぎで取り付けた,社会党とフランス民主連合(中道派)間の合意でもない。

それでも,(与党が社会党の)落ちぶれた数人のエゴイスト達をスカウトしたのは,やはり見事な手腕としか言いようがあるまい。サルコジ氏はこうして,フランソワ・ミッテラン元大統領が1988年に行ったことを繰り返しているのだ。しかも,サルコジはさらに派手な芸当をやってのけた。

それは,世論の寵児であるベルナール・クシュネル(社会党)( * 訳注③ )を味方に引き入れたことだ。それは,ジャン=ピエール・スワソン( * 訳注② )をスカウトしたのとはわけが違う。当時ミッテランは”団結したフランス”を掲げて大統領に再選された。しかしサルコジは,フランスを”福祉の援助を受ける者”と”働き者”という2つのカテゴリーに分け,両者を対立させてばかりいる。サルコジは”( 60年代末の)学生運動的な思想を葬り去る”と言ってはばからない。それなのに,その(学生運動の)自由至上主義的なエスプリの中心人物( * クシュネルのこと。訳注③ )がサルコジに魅了されてしまった。

しかし,この(野党の人気政治家たちのヘッドハンティングという)策略は,(実質よりも)純粋に外観を重視することの表れであり,大統領自身の気質がそれを助長してしまっている。サルコジがいつでもあらゆることに口を出すと言うのなら,”左派”の大臣など何の役に立つというのだろう?もっともサルコジは,ちょっとでもうんざりすれば,重要な役職に就けた並み居る忠実な部下たち(オルトフー,ダティ,ベルトラン)や大物たち(ジュペ国務・環境大臣,ボルロー経済・雇用大臣)に頼ればいいのだ。

ロラン・ファビウス(社会党)は以前,フランソワ・オランド(社会党書記長)にこう告げた。『 野いちごの後ろにゾウを隠すことなど出来はしない。( * 注④ ) 』 ならば,一握りのさくらんぼの後ろに与党のゾウを長い間隠しておく( * 注⑤ )ことなど,さらに難しいだろう。

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 キーワード & 訳注 
*①4匹のツバメが来たからといって・・・
・・・4匹のツバメは,社会党からサルコジ内閣(右派)にヘッドハンティングされた4人の有名政治家(クシュネール,ジュイエ,イルシュ,ベッソン)のこと。フランスのことわざ『 ツバメが一羽いるからといって春が来たことにはならない→ひとつ良いことがあったからといって全体が好転するわけではない 』に由来。

*②ジャン=ピエール・スワソン
・・・非常に世渡り上手な政治家として悪名(?)高い,超ベテラン議員。5つの内閣で大臣を歴任。近年ではル・ペン率いる極右政党と手を組み,末路を汚したとも言われたが,次回6月の総選挙では与党(UMP)の公認を取り付けた模様。
*③ベルナール・クシュネル
・・・『 国境なき医師団 』の創始者であり,フランス社会党(PS)の政治家。最も著名な”フレンチ・ドクター”として,フランスでは国民的人気がある。クシュネルは60年代初頭,フランス共産党(PCF)の思想に魅せられ,60年代後半には学生運動(大学紛争)に参加。フランスで大学紛争が最も過激だった68年,クシュネールはパリ医学大学で学生運動を率先した中心人物だった。当記事は,そんな過去を持つ彼が,学生運動のエスプリを否定するサルコジのスカウトを承諾したことに言及。

*④野いちごとゾウ
・・・あるなぞなぞ(ジョーク)に由来するのですが,伏せたほうがいいようです。。。この記事では野いちごは社会党書記長のオランド氏。怒るとすぐに顔が真っ赤になる党首に,ロラン・ファビウスがつけた意地悪なニックネームです。ゾウはもちろん,エレファント,すなわち社会党の大物政治家を指します。つまり,『 党首の後ろで,いつまでもオレたち大物エレファントが大人しくしていると思うなよ 』,というファビウスの脅しですね。
*⑤さくらんぼと与党のゾウ・・・
・・・さくらんぼは,サルコジが野党からヘッドハンティングしたり(クシュネル外相,モラン国防相,イルシュ,ジュイエ,ベッソン=それぞれ政務次官),忠実な側近の中から抜擢(オルトフー移民管轄相,ダティ法務相,ペクレス高等教育相,ベルトラン労働相など)した新参大臣のこと。与党のゾウ(=エレファント)は,古参の大物政治家であり,ここでは,ジュペ国務・環境相,ボルロー経済・雇用相,アリオ=マリ内相,バシュロ厚生・スポーツ大臣などのこと。

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