* サルコランド---ニコラ・サルコジの最強コネクション

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フランス大統領選からひと息つくひまもなく,週末には総選挙です。サルコジ大統領は与党(国民運動連合 / UMP)の過半数獲得を狙うどころか,フランス政治史上最高の勝利を目指し,大統領選勝利の勢いをかり,”攻め”の選挙運動を展開。最大の抵抗勢力である社会党は,内紛の収拾がつかないまま自滅しかねない状態。中道派バイルは新党 MoDem(モデム,民主運動党)を結成したものの,サルコジに引き抜かれた(かつての)バイルの腹心,エルヴェ・モラン氏(現国防相)らが中道派の有力政治家を引き連れ,与党寄りの新勢力NC(新中道 /・・・いっそUMPに合流すればいいのにね)を結成。中道派はまっぷたつに分裂。よって,野党が議席を失うのは必死。世論調査でも,サルコジ率いる与党の大勝が予想されています。つまりフランス国民は,自らの多数決で選んだ大統領に,さらなる権力の裏づけと正当性を与えようとしています。
 今日はその前に,大統領就任以前から有名だった各界におけるサルコジの絶大な影響力の話題。政財界・メディアにおける彼のコネクションは,まるでとどまることを知らないかのよう。昔の記事でもすこし触れましたが,おさらいと最新情報の整理も兼ねて,ロイターの記事をメモ代わりに訳しておきますね。赤字の部分がサルコジコネクションです。


 『 サルコジとメディアの関係を左派が懸念 』

ロイター発
| ルモンド紙他 | Reuters | Le Monde | 2007/05/23付 |
"Les liens de Sarkozy avec les médias inquiètent à gauche"


ニコラ・サルコジ大統領とメディアとのつながりに対し,労働組合や左派政党,NGO(非政府団体)は,報道の自由を脅かす”ベルルスコーニ的なやり方”( *訳注①) だとして警戒している。

サルコジ氏の大統領選挙対策チームの副ディレクターであったロラン・ソリ氏( Laurent Solly )は水曜日,ブイグ・グループ(*注①)に迎えられたが,それと同時に,2006年度の平均視聴率31,6%を誇るフランス最大の民放テレビ局TF1テー・エフ・アンの総合ディレクターとして,”無期限で”の就任が決まった。この人事は,ル・ポワン紙ル・フィガロ紙のジャーナリスト2名が大統領官邸(エリゼ)と首相官邸(マティニヨン)に幹部としてスカウトされた直後だった。

労働総合同盟(CGT)は,国家元首サルコジが世間の良識をあまりにも馬鹿にしている,と非難する。また,『 大統領に選出されてたった数日後の,このスキャンダラスなやり方 』に遺憾の意を表明した。『 非常にずうずうしく,暴力的な行為 』であると,CGT文化部の総書記長補佐であるジャン=フランソワ・ピョジョル氏( Jean-François Pujol )はロイターに語った。

一方,フランス民主主義労働連盟(CFDT)の文化部広報は,『 情報(の自由)に対する,息苦しい時代の到来 』 だと表現する。総書記長補佐フィリップ・ドゥブリュイエンヌ氏( Philippe Debruyne )は,『 このまま見過ごすわけにはいかない 』 と警告した。『 ロラン・ソリ氏の件は常軌を逸しており,風刺漫画のように滑稽で極端 』であり,『 白日のもと公然と,個人的な友人関係によって人事を決めることを何とも思っていない 』と,ロイターに語った。『 なんでもありで,何も隠す必要さえないのだから 』

国境なき記者団(RSF)の団長であるロベール・メナール氏( Robert Ménard )はジャーナリスト達に対し,『 警戒 』し『 圧力に屈しないように 』と呼びかけた。彼がロイターに語ったところによれば,『 ニコラ・サルコジだけが干渉的な政治家ではない。政治家というのは,大概そういうものだ。しかし,サルコジのやり方はよりオープンで分かりやすいのだ 』『 (報道に対する)圧力は常に存在した。しかし,ニコラ・サルコジ氏の圧力のかけ方は,他のどの方法よりもあからさまだ。我々がそれに抵抗しなければ 』と,国境なき記者団の団長は続ける。彼は,『 いくつかのメディアとの非常に親密な関係 』を強調した上で,アルノー・ラガルデール氏( Arnaud Lagardère )( 同じ名を冠する大企業グループの会長 )の例を挙げた。特に『 パリ・マッチ 』(芸能週刊誌)( *注③) や『 ELLE 』などで有名な世界最大の出版社であり,ラジオ局 Europe1(ユーロップ・アン)も支配下に収めている。大統領の親友であるアルノー・ラガルデール氏は2005年4月,ドーヴィル市で開催されたアシェット出版社グループ主催の主要幹部セミナーで,サルコジ氏を”兄弟”として紹介したのだ。

テレビ局TF1を傘下に収めるブイグ・グループ社長,マルタン・ブイグ氏( Martin Bouygues )は,ニコラ・サルコジ氏とセシリアの結婚の証人のひとりである。また,ブイグ氏はサルコジ夫妻の息子ルイの洗礼に立ち会った代父でもある。
サルコジ夫妻の結婚に立ち会ったもうひとりの証人は,世界最大の高級ブランドを有するLVMH(ルイヴィトン・モエ・ヘネシー)グループ会長であり,経済日刊紙『 ラ・トリビューン紙 』の経営者でもあるベルナール・アルノー氏( Bernard Arnault )だ。

水曜日,社会党( PS )書記長のフランソワ・オランド氏は,『 いくつかの報道関係企業との身内同然の関係 』を告発し,前述と同様,ラガルデール・グループを激しく糾弾した。また,その前日にはオランド率いる社会党は,『 厚顔無恥な陰謀 』であり,『 次元の異なる事柄をいっしょくたにしている 』と非難している。
革命的共産同盟(LCR)はそれを,民主主義に対する『 脅威 』だと表明した。LCRの声明文は,『 報道の自由とメディアの独立性を脅かすベルルスコーニ的なやり方 』だと弾劾した。

<< * 訳者追記 >>
ル・モンドの記事によると,ニコラ・サルコジが任命した新・警視総監フレデリック・ベシュナール氏( Frédéric Péchenard )は,サルコジの幼なじみだそう。また,rue 89の記事(リベラシオン紙の有志ジャーナリスト達による独立系情報サイト)によれば,警視総監はその昔,サルコジ一家とご近所さんで,サルコジママとベジュナール氏のママも当時からの”ママ友”だとか。
* 関連記事 : 『 親愛なるニコラ・サルコジ氏へ---France3記者クラブより公式声明 』
          『 サルコジ新大統領,そしてフランスの言論・思想の自由

        
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 キーワード & 訳注 
*① ベルルスコーニ的なやり方 ・・・
・・・2006年までイタリアの首相だったシルヴィオ・ベルルスコーニは多くの国内テレビ局などを所有し,イタリアメディアの実に70%が彼のコントロール下にあるとされる。
*② ブイグ・グループ ・・・
ブイグといえば,フランスに住んだことのある人には,やっぱり携帯電話でおなじみですよね!建築,不動産関係からテレビ局,電話会社など幅広く経営するフランスの大企業です。たとえばTGVの車両を製造するALSTOMも今ではブイグ・グループ傘下だし,フランスの公営団地HLMにもブイグ建設がたずさわっています。
*③ パリ・マッチ ・・・
フランスの大手芸能週刊誌。ここの前ディレクターは,サルコジ夫人セシリアがモロッコ人の広告会社経営者と駆け落ちしてニューヨークにいるところをパパラッチして表紙に掲載して話題になりましたが,彼はその後突如解雇されてしまいました。表向きの解雇理由は『 売り上げ部数の減少 』だそうですが,ディレクター本人は『 セシリアの駆け落ち記事のおかげで部数はむしろ伸びており,解雇理由は事実無根だ 』としており,サルコジの圧力説が有力。この事件はフランスのジャーナリズム界において,サルコジという禁忌を犯すことへの,ある種の恐怖を植えつけたよう。

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