* フランス総選挙いろいろ / たまにはビジュアル路線?

photo by © rue89

社会党 / マチュー・クライン ( Mathieu Klein )     与党 / ロラン・エナール ( Laurent Hénart )

明日10日に行われる5年ぶりのフランスの国民議会(下院)選挙。( 得票が過半数に満たない場合は17日に決戦投票) ”定数577議席のうち,サルコジ大統領率いる与党が400議席以上を獲得し圧勝”というシナリオが,大方のメディアの予測であり世論調査が示すところでもあるのは,前回お話したとおりです。『 国民は自分のマニフェストに賛成して大統領に選んでくれたのだから,自分はそのマニフェストを実現させるためにも,与党に議席の過半数を獲得させなければならない 』というのが,サルコジの理論。確かにそれはもっとも。でも,過半数どころかフランス史上最大の議席数獲得を狙い,野党を壊滅的状況に導こうとしているのは,これいかに?

そして,マリアンヌ紙の創始者でもある,あの(!)ジャン=フランソワ・カン氏によれば,『 サルコジは大統領選挙中ずっと,(前政府との政治的)”断絶”を主張してきたのに,今回の総選挙でサルコジが当選させようとしている大半の与党議員たちこそ,前政府で活躍した政治家だ。一方で”断絶”を叫びながら,他方で,断絶しなければならない前政府の継承者を引き継ごうとする。これこそまさに天才的な手腕だ 』そうですよ。

対する野党は『 国会こそ,反権力の発言の場 』であり,『 さまざまな政治的な思想が共存してこその民主主義 』であるとして,自らの存在意義を再確認し,背水の陣で迎え撃つ構え。

そんな状況下,フランス北東部ナンシーのとある選挙地区では,社会党と与党が誇るメンズ候補者2人が熾烈な選挙戦が繰り広げているとか。今日は息抜きもかねて(・・・いつも息抜きかも),最近このブログでも採り上げている,リベラシオン紙の有志ジャーナリストたちによるrue 89(89番地)の記事を紹介します。


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 『 ナンシー / 理想の愛人クライン VS. 理想の夫エナール 』
 2007/05/31
"A Nancy, Klein l'amant idéal contre Hénart le gendre idéal" Rue 89

今回の総選挙では,全国的に与党(UMP)の圧勝が予想されている。だが,右派の支持基盤でありながら,与党がトップ当選できない可能性のある選挙区がある。

レ・ムルト・エ・モゼラン市(Les Meurthe-et-Mosellans)の第一区で,与党公認のロラン・エナールは政敵である社会党マチュー・クラインを前に,負けを覚悟で大きな賭けに出た。この選挙区では,大統領選の決勝投票でセゴレーヌ・ロワイヤルがニコラ・サルコジを僅差(50,81%,577票差)で破っている。それは与党にとって青天の霹靂(へきれき)であり,1997年の国会解散の悪夢を思い出させるに足る出来事だった。当時,国会議員の地位にしがみついていたアンドレ・ロシノ氏(André Rossinot)を引きずりおろしたのが,社会党のジャン=ジャック・ドゥニ氏である。

それでも,若きロラン・エナールは,自分の地位を確立したと信じていた。3期目のラファラン内閣で最年少だった彼は,自分自身の力で地方と国家の両レベルで頭角を現した。若く(39歳),女性をうっとりさせる微笑を持つ彼は,理想の夫タイプだ。彼は,いまだ伝統的な政治思想が根強く残るナンシーに,中道右派という政治教義をいつのまにか根付かせることに成功したのだ。

だが,彼のサクセスストーリーもそこまでだった。2005年5月,ド・ヴィルパン内閣から外されたエナールは同年8月,(部分的)国会議員選挙で再び自分の選挙区から出馬した。相手側の51,53%の票を前に,彼はたった400票の差で,いばらの道を余儀なくされた。そして彼の選挙区の社会党支持者たちは,待ち望んでいた救世主を予想外に迎えることとなった。その人物こそ,若く(31歳),背が高くブロンドで,女性の心をときめかせる微笑を持つ,理想的な愛人タイプ,マチュー・クラインだった。今や彼は,野心に燃えるエナールをしっかりと牽制している。クラインはEU憲法反対主義者だが,(社会党内の)大統領候補信任投票ではドミニク・ストロス=カンを支持した。ナンシーは全体的に庶民的な地域だが,同時に,富裕層が住む郊外の小さな村々のようにブルジョワ・ボヘミアン的(bobo)な側面もある。この二面性を持つ選挙区を,クラインはうまくまとめることに成功したのだ。

ならばエナールは,これから離れ業(わざ)をやってのけなければならない。すなわち,大統領選挙の間,彼が一度もはっきりと表明してこなかったサルコジ支持を明確にし,同時に中道派 MoDem(モデム,旧UDF)が擁立するアラン・ミトン氏を倒すのだ。ミトンは2005年の(部分的)国会議員選挙で6,16%の票しか獲得できなかったが,この4月の大統領選第一回投票で(中道派党首の)バイルが21,12%という好成績を収めたことで,今後の状況は変わってくるだろう。そしてそれは事実,マチュー・クラインの勝利を加速させるということだ。

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それにしても,すごいタイトルですよね・・・さすが rue 89! 日本だったら,『 国会議員候補に対してなんて不謹慎な! 』 なんて怒られそうだけど,芸能人やプロレスラーが市長選や都知事選に立候補して,しかも当選する方がよっぽどスキャンダラスだと個人的には思います・・・。

6 Comments

Denny Johpp  

サルコジ政権後、「そうかな?」という動きになっている
ようですね。
大統領選後の動きは、日本では大きくとり上げられていま
せんので、様々なメディアのサイトを見にいってます。
(フランスに住んでいれば)中道派支持だったのでしょうが、
アップされている記事からでは、左派は日本的な表現ながら
「解党的出直し」になるのではないかと思います。
日本では、ロワイヤル氏の存在はヒラリー・クリントン氏と
比較されて報じられていましたが(なんで?)、このまま
では「誰?」と忘れ去られるかもしれません。

2007/06/10 (Sun) 06:44 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77to : Denny Johppさん

Denny Johppさん,はじめまして。

日本はやはり,政治レベルでは米政権に関心が集中しているので,
フランスに関しては,
5年に一度の(しかも12年間のシラク政権の終焉という)大統領選のときぐらいしか
注目されないのでしょうね。

G8にしても,日本での報道では
まるで安部首相が地球温暖化防止に大きな役割を果たしたかのような報道でしたが,
フランスでは,安部さんがG8に来たのか来なかったのかも
定かでないかのような存在感の薄さ・・・。

それは仕方ないとしても,
日本の報道にも,より多角的視野による情報を提供してもらいたいなあ,と思います。

さて,フランスではサルコジ大統領の辣腕(剛腕?)によって,
左派・中道派はもちろん,極右政党までも劇的な衰退を強いられそうですね。
社会党も党首(書記長)が次回の党大会で世代交代するようですし,
Denny Johppさんのおっしゃるように,『 解党的出直し 』として
党の根本的見直しが必要となってきそうです。

そうそう,ロワイヤル氏は,サルコジとのTV討論の最後で自分自身を
『 メルケルやヒラリー・クリントンのように 』と,
彼女たちになぞらえていましたね。
彼女のその比較自体,大統領選の戦略的にもまちがいだったと思います・・・。

2007/06/10 (Sun) 12:59 | EDIT | REPLY |   

Denny Johpp  

個人的には保守穏健ですので、著しい左派支持ではありません。
しかし、一定の緊張感があるべきだと思います(日本もフランス
も)。
その意味では、次期社会党大会は注目しています。
bébépiupiuさんがコメントされているように、ロワイヤル氏は
ヒラリー・クリントンではありませんし(ヒラリー氏の傍らに
は、「次期大統領主席補佐官」と言われ始めている人がいます!)、メルケル氏のように実務重視であるとはいえないです
し・・・。

日本も、小泉さんと間違えられてるのではなんともなぁと思い
ます。

2007/06/13 (Wed) 15:08 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-258 to : Denny Johppさん

Dennyさん,こんばんは!

Dennyさんは保守穏健でいらっしゃるのですね。
ちなみに,このブログは政治的中立を期していたはずが(ほんとです~)
いつのまにかアンチ・サルコジになってますが,
どうぞお気になさらないでくださいね・・・i-229

今回の総選挙(第一回投票)の勢いでは,与党が国会議席を独占しそうですね。
もちろん,与党からみればそれこそが国民の意思であり,大統領への信任の表れ。
そして,野党からみれば,さまざまな民意が反映されにくい国会になってしまう・・・。

ヒラリーさんの傍らに次期大統領首席補佐官!?
ぜんぜん知りませんでした・・・。
Dennyさんはアメリカの政治にもお詳しいのですね。
米大統領選のゆくえは,
日本にとってもフランスにとっても示唆に富んだものになりそうですねi-265

2007/06/14 (Thu) 01:00 | EDIT | REPLY |   

Denny Johpp  

ここ数日LePointやObsを読んでいましたが、LePointは厳しめで
Obsは同情的です。ObsはDSKの論文を掲載していましたが、
説得力にかける感じです。
「オランドは(書記長を)やめなければならない」というインタ
ビューを読み、FigaroMagazineでPSの敗因分析を立ち読みして、
「こりゃほんとにPSは危ない」と思っています。
移民の人々や若年層(CPEに反対した人々)はフランスを見切る
ことを考えているか、逆にFSに流れるかではないか、と思います
が・・・。

2007/06/16 (Sat) 13:33 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-39 to : Denny Johppさん

FigaroMagazineを立ち読みなさっただけで
社会党の敗因をさらりと理解してしまうなんて,すごいです・・・!!

Le PointとObsでは,やはりPSへの見方はかなり異なるのですね・・・。
読み比べてみると面白そうですね。

DSKは,元財務大臣で経済問題に明るい,ということもあり,
政治家としての実力は内外でも相当評価が高いようですが,
いかんせん,彼の最大の欠点は『人気がない』ということに尽きるかもしれません・・・i-230
総選挙に向けて行われたゼニッツでの社会党集会では,
DSKの登場に,一部の支持者からブーイングが起こったのも
記憶に新しいところです・・・。

社会党の今回の敗北は,UMPによる社会党内側からの切り崩し戦略,というよりも
どうやら社会党自身の『 自滅 』,という見方が有力のようですねi-230

いつも貴重な情報を教えてくださって,ありがとうございますi-265

2007/06/17 (Sun) 01:44 | EDIT | REPLY |   

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