* オルトフーの移民規制法,その真意とは・・・?

photo by © Le Monde

サルコジの側近中の側近,移民相ブリス・オルトフー( Brice Hortefeux )

オルトフー移民大臣が提出した移民規制強化に関する法案が,さまざまな波紋を呼んでいます。これに関してサルコジ大統領と蜜月の関係にあるラガルデール・グループが大株主の,ル・モンド紙がおとなしいのは仕方ないけれど,あのL'EXPRESS紙ディレクター,バルビエ氏のビデオ社説までもが妙に歯切れが悪いのが,なんだか気がかりです・・・。というわけでやはりここは,言論の自由が危ぶまれる仏メディア下にあってあいかわらず独立精神旺盛な Rue89 の記事から,2つ続けて紹介します。

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 『 オルトフー,極右有権者に甘い誘惑をささやく 』
2007/06/12| ピエール・アスキ
"Hortefeux caresse l'électeur FN dans le sens du poil" Pierre Haski

総選挙の第一回投票を終え,今や決選投票を待つばかり,という絶妙なタイミングで,移民省トップは移民の家族呼び寄せをさらに厳しく規制する法案を提出した。

この情報は火曜日,折りしも総選挙の第一回投票と決選投票の間に,フィガロ紙からタイミングよく“漏洩”した。すなわち,ブリス・オルトフー移民大臣が新たな移民法案を国事院(コンセイユ・デタ)に提出するというのだ。ならばそれは,たいそうな緊急事態であったに違いない。(←訳注:皮肉です。)これはこの10年間で提案された移民に関する法律の6番目にあたり,そのうち2つは1年以内にニコラ・サルコジが発案したものだ。

この新しい法律は,移民の家族呼び寄せ条件をさらに規制することを最大の目的としている。( *下記のインタビュー記事参照 )争点は非常に深刻だ。なぜなら,人権団体 “受け入れる国,フランス”が算出した数字を信じるならば,『 この法律は,家族呼び寄せ制度の対象となるごくわずかな人数(たとえば2006年度で9000人の成人)のうち,数百人を減少させるに過ぎない 』のだから。つまり,それよりはるかに複雑な移民問題の中の,ひとしずくの水のようなものだ,というのだ。すなわち,彼らの言葉によれば 『 この法律はモラル的にはまったく無意味であり,総合的に見れば効果がない 』。

残る問題は,この出来事が示す政治的な意味である。ブリス・オルトフーは初めから自分のテリトリーをしっかりと誇示した。今年中に2万5千人の外国人を国外追放してみせる,と約束した彼は,さっそく最初の“オルトフー法案”を提出した。ところがそれは,それ以前に提出された法案を行政府が施行,またはその施行が政令(デクレ)で決定されることさえ待たずになされた。ならば,そこに潜在的なメッセージを感じ取らないわけにはいかないだろう。すなわちそれは,ル・ペンを見限り,または(第一回投票を)棄権した国民前線(FN / 極右)の有権者たちへの甘い誘惑だ。現在の与党旋風はこの代価の上に成り立っているのである。

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 『 ヴェイユ,サルコジの立法への執念を指摘 』
2007/06/12| ジネブ・ドゥリエフ
"Immigration: Weil pointe la «frénésie» législatrice de Sarkozy"
Interviweur : Zineb Dryef ( Rue89 ) / Réponse : Patrick Weil


オルトフーが提出した移民法案は,家族呼び寄せの条件として,移民のフランス語習得と共和国的精神への理解を特に要求している。歴史家であり政治学者であるパトリック・ヴェイユ氏とともに,分析を試みる。

この新法の提案をどう解釈すべきか?


これは,国民前線(極右,FN)の有権者に宛てたメッセージである。移民相がこの新法プロジェクトを時機よく公表したのは,移民嫌いの有権者を魅了することを目的としている。数字を冷静に分析すれば,以下のことがおのずと明らかになるだろう。第一に,家族呼び寄せによる移民の数は,毎年申請される15万もの滞在許可証と比べれば,ごくわずかだということ。第二に,この政策が非常にあいまいであること。フランス語能力を条件とするのは,フランス語圏アフリカ諸国からの移民よりも,トルコや中国から来る移民を想定しているからだ。共和国的精神の理解については,個人面接で判断されることになるだろうが,それについては現地領事館の自由裁量権(の濫用)が懸念される。また,家族呼び寄せの条件をさらに厳しくすることは,家族がいっしょに生活する権利を侵害することになりかねない。

ニコラ・サルコジ氏は移民に関する法律をすでに2つ発案(2002年と2006年)してい
   る。問題は,それらの施行だが・・・?


彼が国家を統治する方法にはひとつ,気がかりなことがある。それは,彼が行政を円滑に機能させるための最良の方法を模索することなく,自身が5年にわたって支配した分野(* 内務大臣としてたずさわった内政のこと)に注いだ,執念ともいえる彼の情熱である。次々に新しい決定がなされるおかげで,行政は新法にじゅうぶんに順応する暇さえない。

このように立法をとりまく状況が変化し,多くの新法が続々と提出されるならば,行政の負担はいちじるしく増大するだろう。そしてそれは,ニコラ・サルコジ氏の情熱が誤った方向に向いていることの証(あかし)だ。

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共和国的精神(エスプリ・レピュブリカン),ねぇ・・。それってなんだかお分かりになりますか?わたしは分かりません(笑)。オルトフーさんったら,ずいぶんあいまいな観念を条件に持ち出したものですね・・・。ちなみに13日付けの朝日新聞朝刊によると,それは『 男女平等や政教分離など 』,だそうですよ。・・・だとすれば,イスラム教徒の移民を念頭においているということ?それにしても,『 共和国精神とはなんぞや~? 』・・・と,ぜひフランス人に聞いてみたいものですよね! わたしは,彼らが 『 それって,ソリダリテ(連帯意識)じゃん? 』 と答えるかなあ,と思うのだけど,どうでしょう?あとは,返答に窮して 『 うーん・・・とりあえず,リベルテ,エガリテ,フラテルニテ(自由,平等,友愛)かなー 』(仏共和国の標語です)とか。在仏の方,お試しあれ!

8 Comments

Denny Johpp  

『世界憲法集』を買ってきて、大急ぎでフランス憲法を読んで
います。
ほんとうに共和国憲法にのっとった政治をするかどうか
気にかかります。

L'ExpressやLeMondeも批判しにくい立場でしょうから、「逆張り」でいくしかないかな、と思っています。
在仏であれば国民議会はPSに投票している当方としては、反映
される可能性は少ないと思いつつ今後をウォッチしていこうかと・・・。

2007/06/16 (Sat) 22:34 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Denny Johppさん

世界憲法集!
わー・・・Dennyさんはほんとうに研究熱心でいらっしゃるのですね。
すごいなあ・・・。わたしも見習わなくては!

フランス憲法はフランスですこしだけかじったのですが,
テオリーばかり叩き込まれて,すっかり嫌いになってしまいましたi-231

逆張り・・・。
この言葉に,なんだかとても共感してしまいました。
ちなみに,わたしのベースは『 判官びいき 』なんです(笑)。
でも,政党や右派,左派にとらわれずに
そのときどきに提案されるそれぞれの政治方針を比較検討して
柔軟に考えてゆけたらなあ,と思っています。

総選挙後の国会,そしてフランス全体ががさまざまな意見を反映する
寛容な場であるように,見守ってゆきたいですね。

2007/06/17 (Sun) 01:57 | EDIT | REPLY |   

Denny Johpp  

いまのメディアは、「コネクション」含みでサルコジ
ウォッチのようです(だからPS関連記事探しに苦労します)。
思い切って『マリアンヌ』を、と思っています。意外と安い
ようです。

2007/06/17 (Sun) 06:10 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-258 to : Denny Johppさん

『 マリアンヌ 』!
ツウなセレクトですね!

マリアンヌといえば,なんといっても
創始者ジャン=フランソワ・カン氏とモリス・ザフラン氏ですよね。
特にカン氏はフランスのテレビ政治討論番組などでもおなじみですが,
そのクレイジー(笑)な口調や,ばたばたとオーバーなジェスチャーとはうらはらに
非常に真実を衝いていると,個人的には思っています。

今回の大統領選では,マリアンヌはバイル支持を表明していましたね。
マリアンヌをお読みになったら,ぜひ教えてくださいねi-265

2007/06/17 (Sun) 23:50 | EDIT | REPLY |   

Denny Johpp  

ではマリアンヌをと思っていたら・・・、Obsはサルコジ大統領、
L'Expressはロワイヤル氏(^^;;。予約しておいたので週末に
読みますが・・・。

2007/06/18 (Mon) 22:39 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-259 to : Denny Johppさん

そうだったんですね~!
各誌とも個性があって面白そうですね。

日本ではそういう雑誌を手に入れるのも大変そうですが,
やはり手元にあった方が
じっくりと何度も読めていいのでしょうね。
うらやましいです~i-265

2007/06/19 (Tue) 22:10 | EDIT | REPLY |   

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2007/06/19 (Tue) 23:00 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-209 to : Dennyさん

やはり本物の雑誌や新聞を手にとって読むのが
最良の方法ですよね。。。
web上では,次々と新しい情報が出てくるので
ひとつの記事にじっくり向かい合う気持ちには,なかなか
なれないですし・・・。

ル・モンド紙のサイトにしても,読みたいな,と思った記事は
ほとんどが有料ですし,
リベラシオン紙も新聞の方が1つの記事が長くて充実していますよね。

LesEchosですか!ノーチェックでした。
また読まれたらDennyさんのご感想など教えていただければ
うれしいですi-265

2007/06/20 (Wed) 02:31 | EDIT | REPLY |   

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