* サルコジ的・大統領権力のコンセプトとは---ルモンド社説より

* ニコラ・サルコジ大統領,エリゼ宮にて / image by © Rue 89


フランスの祝日,革命記念日(7月14日)では恒例の大統領のテレビインタビューを行わず,何から何まで
”rupture”
(前政府との決裂)を強調するサルコジ大統領。軍事パレードではいきなりジープから降り立ち,護衛たちがあわてて(?)追いかける中,見物客に駆け寄って握手サービス。続くガーデンパーティーでのスピーチでは,本来ならば政治の将来的ヴィジョンを示す場なのだけど,サルコジさんたら,妻セシリアと彼女の娘たち(連れ子),夫妻のひとり息子への愛情をアピール。どこまでもパフォーマンス好きの大統領なのでした。
・・・というわけで,今日は久しぶりにルモンドの社説から。あらゆるものを呑み込まんとする,強権的ともとれる最近の大統領への警告のようにも思えます。

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『 サルコジ将軍 』 
2007/07/13付 ルモンド紙 社説
"Le général Sarkozy"
 Éditorial du Monde

それは誰の目にも明らかだった。エリゼ宮(* 大統領府)の住人となって以来,ニコラ・サルコジはフランスを支配している。その野望,気性,そして以前から明言していた,国家元首(*フランス大統領のこと)の役割に対する彼のヴィジョン---それらは疑いの余地がない。すなわち,全てを決定し,あらゆる方針を決めるのはサルコジであり,首相はそれを実行に移すに過ぎないのだ。ジョルジュ・ポンピドゥーの名言に従えば,サルコジは”大統領が(全てを)統治することを望んで”いるのである。

そう,すべては明快だ。しかし,フランス共和国の現大統領があらゆる分野に介入するという,いわゆる”独裁政治”への誘惑さえも窺わせるその性質に,一部から激しい非難があがっている。しかしサルコジはそんな非難をものともせず,7月12日,エピナル市で,深遠な視野と絶妙な器用さでもって,国家機構の”近代化”とその必要性についてのヴィジョンを描いてみせた。

彼の”強大な国家”の観念は,危険だろうか?---それは違う,とサルコジは言う。なぜならそれは,第五共和国の創始者(* シャルル・ド・ゴールのこと)の観念を受け継いだものだからだ。ド・ゴール将軍は ”フランスは,政治的な意思を支え国家権力を強化する体制を必要としている”と確信していた。そんなド・ゴール将軍とその確信を,(サルコジのように)これほどあからさまに賛美するのは近年めずらしい。なぜならド・ゴールの観念は,議会国家フランスという”無力で麻痺状態の制度”の対極に位置するものだからだ。

サルコジの抱く”アクティブな大統領”の概念は,好んで危険を冒す類いのものだろうか?
---そうではない。なぜなら彼は,第五共和国を過去のものにしようとも,大統領制度を改革するために権力のバランスを再検討しようともしないのだから。しかしだからと言って,サルコジが歴代の大統領(前大統領シラクを除く)の例に倣って,大統領の権限をより広義に,さらには絶対的にまで解釈しないことにはならない。ならば,サルコジのやり方は強権的ということか?---それも違う。なぜなら,必要な改革を検討させるべく大統領が組織した委員会は,多元的かつ経験豊かな人材で構成されており,大統領が国会演説する権限から議会のコントロール権の強化に至るまで,そして反対勢力(野党)の地位規約から国会議員選挙での比例代表制度の一部導入に至るまで,さらには上院(元老院)の役割と憲法院の役割をも含めて検討する使命を負っているからだ。

さて,残るは最重要事項だ。すなわち,国家元首(*フランス大統領)の政治責任問題である。かつてフランソワ・ミッテランは二度にわたってコアビタシオン( * 注①)を受け入れたが,ジャック・シラクは1997年の下院解散が招いた失態( * 注②)に続き,2005年にはEU憲法を国民投票で否決され,かくも深刻な失敗を二度繰り返した結果,自らの大統領任期を引き延ばすことを断念した。つまり,大統領が自由を得る方法は,それぞれの大統領で異なるということだ。したがって,ニコラ・サルコジが”統治する大統領”たることを欲し,国民に対して全責任を負うというのならば,彼は”絶対権力”という”危険な”誘惑を退けるためにも,自らの(大統領の)権力の均衡を取らねばならない。今後は,この重大な視点から彼の政策を評価し,判断すべきであろう。

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 キーワード & 訳注 
*① コアビタシオン(cohabitation) ・・・
フランス特有の政治形態。いわゆる保革共存政権。この場合,必然的に大統領と首相の出身党は異なる。すなわち,国会議員選挙の結果,大統領の出身党が多数派を占めることが出来なかった場合,大統領は多数議席を獲得した党が推薦する人物を首相に任命せざるを得ず,2つの対立する政党がともに政権の座に就くことになる。現在の第五共和国下では,ミッテラン大統領(社会党)+シラク首相(右派),ミッテラン大統領+バラデュール首相(右派),シラク大統領(右派)+ジョスパン首相(社会党)の例がある。( → * 以前の記事より )
*② 1997年の下院解散が招いた失態・・・
・・・1997年,アラン・ジュペ内閣の不人気や度重なる大規模なストライキやデモ行進を前に,シラク大統領は”下院解散”という大きな賭けに出た。しかし,再び国民の信任を得て国会を与党議員でさらに独占しようと目論んだシラクの読みは外れ,総選挙では連合左派が大勝。シラクは社会党のリヨネル・ジョスパンを首相に任命せざるを得ず,第五共和国下で3度目のコアビタシオン(保革共存政権)を招いた。

6 Comments

Denny Johpp  

そういえば、「ド=ヴィルパンのあとはミシェル・アリオ・マリか?」という記事がありました。
マリアンヌ誌のスクープらしくいま読んでいますが、「下手を
するとサルコジさんぐらつくか?」になるとも限らないですし。
…ここらへんはル・モンドやフィガロはどうなんでしょうか?

2007/07/24 (Tue) 22:11 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-258 to : Jonny Dehppさん

> 「ド=ヴィルパンのあとはミシェル・アリオ・マリか?」

もしかして,クリアストリーム事件のことですか?
ちょうどその記事を作成していたところなので・・・(^-^;)
(違っていたらごめんなさい・・・)

フィガロ紙は,フランスの友達が
記事を(勝手に!)セレクトしてスキャナーで取り込んで送ってくれるのですけど,
日本関連ばっかりなんです。。。
複雑です・・・i-227

2007/07/25 (Wed) 01:39 | EDIT | REPLY |   

Denny Johpp  

>もしかして,クリアストリーム事件のことですか?
そうですそうです。でも、徐々に揺さぶっているのだな、
フランス司法も「機能」しているのだな、と感じます。


>日本関連ばっかりなんです。。。
>複雑です・・・
原発の記事があるのでは、と思います。
最近なかなかURLを見ることができないほどの忙しさで…。

2007/07/28 (Sat) 00:02 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-275 to : Denny Johppさん

> 原発の記事があるのでは、と思います。

おっしゃるとおりです。

先日,フランスの国営テレビ放映の,
柏崎原発所の地震被害に関する特集番組を観ました。
チェルノブイリ事故の再来か?とか,
さすが原発大国フランス,関心は尋常ではないようです(^-^;)

ご多忙とのこと,ご自愛くださいね。

2007/07/28 (Sat) 13:13 | EDIT | REPLY |   

Denny Johpp  

この週末、やっと観られそうです。ではマリアンヌから(笑)。
ともかく、関東は火力発電所のフル稼動でなんとか夏を乗りきれ
そうです。
選挙でそこまで考える人いたのかな?

2007/07/28 (Sat) 18:08 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-275 to : Denny Johppさん

ほんと,こんな事態になると
自然エネルギーを利用した発電の大切さを実感します!

選挙は,やっぱり年金問題を念頭に投票した人が多かったそうですね。

2007/07/29 (Sun) 22:39 | EDIT | REPLY |   

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