サルコジ的メソッドの代償 /サルコジにみる円滑な制度改革の進め方 【後編】

* images by © Le Monde

フィヨン首相とサルコジ大統領

サルコジ夫妻の離婚騒動で中断していた記事(の訳)の後編です。・・・いや,そんなことで中断するなよ!・・・ってかんじですが。ちなみに,ラシダ・ダティ法務大臣といえばセシリアから”妹のように”かわいがられていることでも有名だけど,ダティ女史はただでさえ法曹界から反発が強いのに,セシリアがいなくなっても大丈夫?(マリオネット番組や仏週刊誌によると,セシリアがダティにハートモチーフのブレスレットを贈ったとか。)それとも逆に,パトロンなしでも十分にやっていけるだけの実力を証明する絶好の機会となるか?・・・まあ,余計な実力は発揮しなくてもいいのですけど・・・地方の裁判所をバシバシ閉鎖するとか,そーゆーことにはね。


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『 サルコジ的メソッドの代償 (後編) 』 
2007/09/23付 Le Monde | Analyse
"Le prix de la méthode Sarkozy, par Philippe Ridet"
 ルモンド紙 | 分析
par Philippe Ridet ( フィリップ・リデ著 )

(*)は訳者による注釈

すでに夏のバカンスがはじまる前,サルコジは大統領選中に掲げた自分のマニフェストと折り合いをつける柔軟性を自ら示した。たとえば,大学制度改革(*注①)に関しては自らの党(UMP)からの要望を聞き入れ,(*博士課程の)選抜試験の導入を断念することで妥協した。また,最低罰法案(*注②)と同様,”ミニマムサービス”法(*注③)についても大幅な修正を受け入れた。

”スーパープレジデント”であり,マスコミの寵児であり,常に超多忙---ムッシュ・サルコジはそんな自分にさぞ満足だろう。大統領は毎日一度または二度コメントを発表することで,メディアの話題を自分の政策で独占することができるのだ。野党が大統領の政策ひとつひとつに反論しようと腰を上げたときには,大統領はすでに次の問題に取り組んでいる。そして,口を開くたびに,例の 『 私は嘘をつかない。あなたたち国民を裏切らない 』 のキャッチフレーズをふれまわるサルコジだが,失敗した時に備えて,しっかりと反論を用意している。『 わたしが(改革を)試みたことを,フランス国民は怒りはしないはずだ。もし(改革が)失敗に終わったならば,私は別のことを試すまでだ 』 国民からの高い支持率を維持すべく,自らが作り出した言葉の魔力と抜群の行動力を頼りに,サルコジ氏は万が一の失敗に備え,すでに自分だけに退路を用意しているようである。

どんな犠牲を払ってでも前進する

果たしてそれは,デモクラシーの後退なのか?それとも,大統領の任期が(*以前の7年から)5年に改正された後の,新時代の到来なのだろうか?サルコジ大統領があらゆる場面で介入する事態は,すでに犠牲者を生み出している。サルコジはずば抜けた活動力で野党を息切れさせているが,同時にリスクを冒している---つまり,敵ばかりか自分の友人たちまで窒息させているのだ。真っ先にいらだちを露わにしたのは,フランソワ・フィヨン首相だ。彼は,国家元首(*サルコジのこと)から”協力者”として扱われたり,せっかくマスコミに採り上げられた自分の発言が,大統領の”たかが”スーパーバイザーであるクロード・ゲアン氏やアンリ・ゲノ氏,ダヴィッド・マルティノン氏(*大統領府広報官)らの発言のせいで影が薄くなってしまうことに我慢できないのだ。フィヨンはサルコジの大統領選で,サルコジズムの”労働問題の一翼”をになってきたにも関わらず,今ではサルコジが労組側と交渉に挑む際,”改革推進者”として口をはさむことすら許されていない。しかし,その労働問題こそ,まさにフィヨン首相がかつて評価を確立した分野なのだ。9月20日,サルコジ氏はフィヨン首相の”賞賛すべきすばらしい”働きを強調することで,とりあえず彼の面目を立てようとしたのだが---。

9月20日,テレビでの放映時間が各大臣に均等に配分されたとはいえ,彼らが実質的な分け前にあずかったとは言い難い。なぜなら,大統領とエリゼ宮のスーパーバイザー(*クロード・ゲアンのこと),エリゼ宮が選抜した官房の厳格な監視下にある大臣らは,メディアで自分たちの存在感が希薄であることに危機感を抱いており,それがもたらす代償を恐れている。反対に,テレビやラジオの定時放送枠(*定時ニュースなど)は,大統領の話題にたっぷりと時間を割くというのに---。サルコジ大統領は各大臣を,マスコミの反応によってのみ評価する。大臣たちも,そんな自分たちが非常に不安定な立場にあることを自覚している。”1月に内閣改造が行われるかもしれない”という意地悪なうわさが広まる中で,彼らはますます居心地の悪い思いをしているのだ。

そして,今まで”サルコジズム”の新星としてもてはやされたクリスティーヌ・ラガルド経済大臣は,今や”まやかしの才能”としてこき下ろされる始末だ。何がいけなかったのか?それは,公務員制度改革に”峻厳なシナリオで”挑む,と話してしまったことだ---しかも,時期尚早に。なぜなら,この時こそ可能な限りの官僚的表現でもって,公務員制度の”再評価”という言葉にすり替えるべきだったのだ。しかし,彼女がそのような暗黙の政治的ルールに無知だったからこそ,国家元首(*サルコジ)の目には新鮮に映り,”初めての女性トップ”として,いそいそとベルシー(*経済省)の頂点に据えたのだ。

ならば,”開かれた”政治のシンボルとして,サルコジが野党からヘッドハンティングしてきた大臣たちはどうだろう?彼らは自らの苦い経験を経て,自分たちの特異なポジションの限界を思い知らされることになった。すなわち,下院で大多数を占めるUMP(国民運動連合 / 与党)によって,移民の家族呼び寄せ条件を厳しくする決議がなされた際,(野党から引き抜かれた)大臣たちの憂慮は無視されたのだ。サルコジ大統領は自分が”党や派閥”の枠を超えて政治を行うことができる証(あかし)として,彼らの存在をを国民にアピールしたのではなかったか。しかし結局は,新しい同盟者と昔からの友人をくらべた時,大統領が前者より後者を好いていることが露見するのに時間はかからなかった。

内閣のただ中にただようこれらの緊張と閉塞感が,常に世論から支持されているサルコジ的メソッドの失敗をただちに予見しているとは言えまい。しかし,少なくとも,それがもたらす代償は明らかだろう。傷つき足をひきずる部下を振り返ることもなく,ただひたすら独りで前進するこの国家元首は,あらゆる意味で危険に身を晒しているのだ。そしていつの日か,彼は孤立するだろう。サルコジは今のところ,たとえいかなる犠牲を払おうとも,後ろを振り返らずに是が非でも前進する道を選んだ。 『 感傷にひたっている暇などない 』--- ”たかが”大統領選で勝利したあの日,彼はすでに5年後の再選を胸に思い描きながら語った。そして今,大統領はその時の言葉を確かに守っているのである。( 完結 )

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ル・モンドのジャーナリストたちも,ようやく以前のように口がすべらかになってきたようです。。。ちなみに,ル・モンドの前社主(というか記者たちから再選されなかった)ジャン=マリ・コロンバーニ氏は,サルコジとフィヨン首相の誘いを承諾し,養子縁組の改正法案を審議する政府プロジェクトに参加するそうですよ。

 キーワード & 訳注 
*① 大学制度改革・・・
大学の自治権拡大をめざす改革。実際には,大学の経済的独立と独自の人材発掘,学長の権限拡大が盛り込まれる。修士課程に進学を希望する学生を入試で選抜することは,与党側からも反対が強く,現在のところサルコジは断念したが,別件の法案で盛り込む可能性が残されている。
*② 最低罰法案(Peines-planchers)・・・
前科者による再犯率の上昇を憂慮して決議された法案。再犯については未成年も成人と同様に,禁固刑または執行猶予付きの最低罰が課される。3度目の再犯につき,裁判官は原則として,少なくとも最低罰以上の判決を下さなければならない。また,条件付きで釈放された犯罪者(特に性犯罪者)は必ず定期的な治療を受けることが義務付けられる。
*③ ミニマムサービス法(最小限の公共サービス法 / Service minimum)・・・
大規模なストライキが実施された場合でも,公共交通機関は最小限の運行サービスを利用者に保証することを義務づける法律。サルコジは対象となる公共交通機関をRATP(パリ交通公団)とSNCF(フランス国有鉄道)に限定することで労組側に譲歩した。実施は2008年1月より。

8 Comments

Denny Johpp  

TheTimesのコンピレーションを読みました。
昨日のデイリー・ヨミウリでしたが、「タイタニックのような
フランスから逃げ出す人々」というテーマ。
最後の文章が効いています。

2007/10/29 (Mon) 09:21 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Dennyさん

> 最後の文章が効いています。

・・・って,Dennyさん,それはあんまりです~(笑)
教えてくださいi-265


2007/11/02 (Fri) 21:43 | EDIT | REPLY |   

Denny Johpp  

>・・・って,Dennyさん,それはあんまりです~(笑)
・・・たしか、豪華だけどいつかは沈むだったか、と思い
ましたが・・・。

2007/11/05 (Mon) 15:17 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Dennyさん

なるほど,そういうオチだったのですね!
ありがとうございますi-265

とりあえず,フランスの大統領任期が昔みたいに7年じゃなくて
よかった~(笑)

2007/11/07 (Wed) 01:05 | EDIT | REPLY |   

Denny Johpp  

そうですねぇ(笑)。<7年
沈まぬようにしていただければ、いずれすみやすくなるでしょうね。
・・・でも、アパルトマンで肉じゃがつくっていたりして(笑)。

2007/11/12 (Mon) 08:17 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Dennyさん

> いずれすみやすくなるでしょうね。

フランス人にとって真に住みやすくなるかどうかは分かりませんが,
改革を続ければ
いずれ日本やアメリカのようになることだけは確実ですねi-277

え?肉じゃがですか★

2007/11/14 (Wed) 22:22 | EDIT | REPLY |   

Denn Johpp  

>改革を続ければ
いずれ日本やアメリカのようになることだけは確実ですね。
ストでサルコジさんも現実的な対応をすればかわるかも
・・・? でも日本やアメリカのようになるかどうかは
彼の「まわり」しだいでしょうか?

>え?肉じゃがですか★
ビストロっぽいのを作ってあきたら、突然作り出したり
して・・・。となると醤油もっていかないと;;;

2007/11/19 (Mon) 08:58 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Dennyさん

ほんと,日本やアメリカのようになってもいいのか,
その辺がナゾなんですよねぇ・・・。

『 それでいいのか,フランス国民!? 』
・・・って聞いてみたいです(笑)。
まあそれほど閉塞感にあえいでいる,ということでしょうね。。。

わたしは”弱者にやさしい国”っていいな,と思うのですけれど。

肉じゃがにおしょうゆ!
そうそう,フランスで和食を作るときは
何かと食材が足りなくて苦労しました~。思い出すと泣けてきます(笑)。

2007/11/23 (Fri) 02:08 | EDIT | REPLY |   

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