* ゾエの箱舟,どこへゆく

* images by © Le Monde

サルコジ大統領と解放されたフランス人カメラマンたち

フランスではSNCF(国鉄)が無期限ストに突入,一部の大学封鎖,それに伴う学生とCRS(保安機動隊)の衝突など,サルコジさんにとって,自らの強硬改革路線が招いた最初の試練がはじまりました。それらは今後扱うとして,今日はみなさん既にご存知かと思いますが,フランスの民間団体『 ゾエの箱舟 』(ラルシュ・ド・ゾエ)事件について。ダルフール難民の孤児としてフランスの”ホストファミリー”らの家に”滞在”することになっていた子供たち。しかし実際は,こどもたちはチャド共和国出身で,孤児でもなく,『ゾエの箱舟』 スタッフらによる一連の行為は国際条約違反であるとして,チャド政府はスタッフらを拘留。
外国からの養子縁組手続きが年々複雑になっている今,『 ゾエの箱舟 』は果たして,多額の金銭と引き換えにフランス人家族へ養子縁組を仲介する組織だったのか?それとも理想主義に魅入られた人たちによる,人道的援助の行き過ぎだったのか?以前からこの団体の存在とその不明瞭な活動を認識していたフランス政府は,事態を未然に防ぐことができなかったのか?---そしてメディアの注目が集まれば集まるほど,がぜん自分がしゃしゃり出ないと気が済まないサルコジさん,自らチャドに乗り込んで事態は外交問題に発展。

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『 薬莢
(やっきょう) 』 
2007/11/05付 Libération | Éditorial | 社説
" Cartouche "
 リベラシオン紙 | par Didier POURQUERY(ディディエ・プルクリ著)
(*)は訳者による注釈,補足


ニコラ・サルコジが美辞麗句のエキスパートだということは周知の事実だ。弁護士でもある彼は,誰からも聞かれていない質問に(勝手に)答え,癇に障るすべての指摘に反論する。たとえば,今やすっかり有名になった,このフレーズのように---『 それに関して私を批判するのは結構だが,もし私が(それを)実行しなかったならば,後で一体何と言われるかな? 』---反論の余地はないだろう。

そしてフランス大統領は,(*拘束中のフランス人)ジャーナリストらを連れ戻すためにチャド共和国へ降り立った。(サルコジが行っても行かなくても,彼らはいずれ解放されたのだが。)彼らをヴィラクブレイ(*注①)で出迎えればいいものを,なぜわざわざ現地へ向かったのか?自分のイメージにプラスになるから?それは確かだ。ゲームを支配するチャド大統領に担保を示す必要があったから?それも明白だ。

そして,そんなサルコジの奇妙な発言はあらゆる憶測を招くことになりかねない。すなわち彼は,チャドの司法当局を”尊重”するが,フランス人拘束者たちは”自分たちの権利を保障されるべき”であり,さらには『 ゾエの箱舟 』のメンバーたちがフランスで裁かれるべきだ,と強調したのである。また,今回の件は欧州多国籍軍(Eufor)の軍事展開とは何の関係もなく,チャド側から圧力がかけれらたこともない,と何度も繰り返した。もちろん,イドリス・デビー(*チャド大統領)もそれについては断言している---”くどいほどに”,と付け加えておこう---。

しかし,自称NPO 『 ゾエの箱舟 』のメンバー6人は,いまだ現地でチャド当局に拘束されたままだ。そして本国フランスは今,精神分裂病的ともいえる奇妙な現象に包まれている。すなわち,この波乱に満ちた事件が非常にセクト主義的な側面をもっていることが徐々に明らかになる反面,親切心の”犠牲者”となった彼らを支持する動きも広がっているのだ。

連続ドラマが最終回を迎えるのはまだまだ先だ。しかしニコラ・サルコジはこのゲームの中で,”メディアと外交”という名の薬莢(やっきょう)に,あまりにも早く銃弾を詰めてしまったようである。

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 キーワード & 訳注 
*① ヴィラクブレイ・・・
Vélizy-Villacoublay。パリ郊外イヴリンヌ市の町。フランス空軍の基地がある。『 ゾエの箱舟 』のメンバーらと共にチャド司法当局に拘束されていたCAPAのカメラマンたちを,サルコジ大統領みずから現地に出向き,フランス軍機で連れ帰った。記事では,わざわざサルコジ大統領が現地に行かずとも,ヴィラクブレイの空軍基地で彼らを乗せた飛行機を出迎えれば済むことではなかったか,と指摘している。

2 Comments

Denn Johpp  

クシュネルさんを信用というか信頼していないという
イメージを与えてしまったとすれば、「隙をみせた」
ことになるのでは。と思います。
任せておけないんだろうなぁ・・・。

2007/11/19 (Mon) 08:59 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Dennyさん

クシュネルさんと言えば,
ブルガリア人看護婦解放劇の件でも,かなりないがしろにされてましたよね~。

あの”最悪の場合,戦争という手段もあり得る”発言をした
口の軽いクシュネルさんですし。

2007/11/23 (Fri) 02:16 | EDIT | REPLY |   

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