* フランスのセミは夏に歌い,冬にデモ行進する  ( 公務員年金制度改革 / レクスプレス紙より )

* images by © Rue 89

ストライキ続行の呼びかけに挙手するSNCF(フランス国鉄)職員たち,2007年11月20日

サルコジ改革はさっさと次のステップ(購買力の向上,雇用安定政策)に進んでいるけれど,もうすこしストライキの記事を紹介しておきます。それから,今回の大規模なストライキの直接原因となった特別年金制度改革について,まだ説明していなかった気がするので,キーワード欄に書いておきますね。それでは,軽快なテンポと鋭い切り口でおなじみの,レクスプレス紙ディレクターのバルビエさんの社説をどうぞ。

*   *   *   *   *   *   *   *    *   *   *   *   *   *   *   *


『 不吉な童話 』 
2007/11/06付 L'EXPRESS | Éditorial | C.バルビエ著
"Folklore funeste" par Christophe Barbier レクスプレス紙 | 社説
(*)は訳者による注釈

フランスのセミは夏に鳴き,冬にデモ行進する。そのあいだ,アリは税金を支払うために働き続けるのだ---”

どうやらフランスは,”改革”という言葉を耳にするたびに宗教戦争を始める癖があるようだ(*注①)。またしても今回わが国は,特別年金制度の見直し法案(*注②)によって二分してしまった。だが,世論は見直しを望んいる。大統領選挙でサルコジが勝利したということは,彼のマニフェストである年金制度改革に国民が青信号を出した,ということだ。そして,社会的公平を実現するためにも,見直しが必要とされている。そんな国民の意思に反し,改革の正当性と自明の理に目をそらし,少数の保守主義者と特別年金の恩恵にしがみつく者たちがバリケードをはりめぐらせてしまった。

誰が悪いのか?”下部組織に先を越されまい”とする時代遅れの労働組合至上主義者らのせいだろうか?穏健派までもが,その徹底抗戦論者たちの要求に追従している。しかし,徹底抗戦論者らがどれだけ要求をエスカレートさせようとも,彼らは決して,いかなる社会的特権も勝ち取ることはない。なぜなら,彼らは改革を邪魔したいだけなのだから!

臆病な政府も同罪だ。なぜなら,政府はCGT(労働総同盟)の要求どおり最終決定を延期し,今まさに決断を迫られているというのに,まだのらくらとしているからだ。つまり,政府はストライキを恐れ,故意に熱意に欠ける態度をとったのだ。だが政府が不熱心な態度を取り続けているうちに,結局ストライキは始まってしまったではないか。政令レベルでの議論を望んだところで,事態はたいして進展しない。今回の消耗戦では一体,組合と大臣(*労使交渉を担当しているフィヨン首相とベルトラン労働・労使関係大臣のこと),誰が誰を消耗させているのかさえ疑問だ。

そして,フランス国民にも責任がある。公共機関を毎日利用しながら,いつも何にでも文句をつけるくせに,実際には決して腰を上げず,結局はこの特別年金制度の恩恵者たちをかばっている。そして心の底では,あわよくば自分のこどもたちがその甘い汁を吸うことを願っているのだ。

つまり,誰もが悪いのだから,誰にも責任はないのである。今回の事態は,フランス社会の長年の怨恨から生じている。それはまるで,脱皮することが出来ずに苦しんでいるさなぎのようだ。フランスは,いわば流血なしには羽化できないさなぎであり,あるいは羽化さえできずに朽ちてしまうかもしれない。

フランスでは,セミは夏に鳴き,冬にデモ行進する。そのあいだ,アリは食事にありつく前に,税金を納めるために働くのだ。かたや大学生たちは,学生総会で(*サルコジによる大学制度改革に対して)反乱の決定を多数決で下し(---各世代が,学生時代に革命に参加しなければ恥だと思っている---),この混乱状態に新たな活気をそえている。もし万が一,この政治的伝統のせいでフランスが世界市場競争の列強国の座から転がり落ちるならば,この騒動はわが国の伝統どころか,ただの馬鹿げた寓話ではないか。だが,我々はデモ参加者の足元にひざまずき,まるでアポリネールの詩”イヌサフラン”(*有毒の植物)のように,ゆっくりと毒されてゆくのだ。”---その野原は毒されていた。しかし,秋になると,美しく---”

フランスは社会構造改革の分野で後れを取っており,この国のデモクラシー体質はそれと同じくらい未熟だ。なぜなら,新しい法律が提案されるたびに,フランス国民は大統領選のやり直しを試み,何百万もの市民によって選ばれた政策が少しでも実現に近づけば,その施行時にそのうちの数千人の市民によって反対されるのだ。この堂々巡りの状況を,政治的バイタリティーと見ることもできよう。しかしまた,それは気まぐれで致命的な熱狂ではないだろうか。

フランスという名の大型船は,確かに何十年ものあいだ,大波に揉まれながらも常に海面を漂ってきた。その船が今まで決して沈まなかった事実を盾に,このような社会的衝突に対して悲観的になる必要はないと,国民は信じてきた。ただ,今回の大騒ぎが,あのタイタニック船のオーケストラが奏でた(最後の)不協和音でなければ,の話だが---。【 おわり 】

*   *   *   *   *   *   *   *    *   *   *   *   *   *   *   *


すでにお気づきかと思いますが,この社説に引用されたフランスの寓話『 セミとアリ 』は,イソップ童話『 アリときりぎりす 』のほぼフレンチバージョンです。でも,本当にきりぎりすじゃなくてセミ・・・?と思い調べてみたら,フランスはもとよりイギリスの原文でも,実はセミなのだとか。・・・しかし,ずいぶん長生きなセミだなあ。


*   *   *   *   *   *   *   *    *   *   *   *   *   *   *   *


 キーワード & 訳注 
*① 宗教戦争・・・
16世紀後半のフランスにおけるユグノー戦争で,勢力を増す改革派(プロテスタント)とそれを過酷に弾圧したプロテスタントの史実を現代に重ね合わせている。
*② 特別年金制度の見直し・・・
フランスの年金制度は,公務員,民間人ともに原則として加入期間40年間,60歳で支給される。(ただし,平均標準報酬額については公務員の方が総じて有利な計算方法が適用されるが,ここでは割愛。)公務員の職種によってはその職業特有の困難度を考慮し,さらに特別な年金制度が適用される職種がある。(この制度は戦後に発足。)その中で今回,公共交通機関の大規模なストライキを起こしたのが,SNCF(フランス国鉄)とRATP(パリ交通公団)。民間人の加入期間40年に対し,彼らは37,5年,平均標準報酬額の算出方法もRATPは退職前の半年間の報酬の平均,SNCFはボーナスを含む最終報酬額,EDF-GDF(フランス電力・ガス公社)も退職直前の報酬額となり,民間に比べ優遇されている。退職平均年齢は民間60歳に対し,SNCFは50歳~55歳,RATPとEDF-GDFは50歳~60歳となっている。サルコジによる特別年金制度改革は,これらの優遇制度をなくし,民間と同様にすることを目指す。

4 Comments

DennyJohpp  

サルコジさんの目指す方向は案外間違っていないのかも
しれませんが、それを読み違えているのか否か、が来年
あきらかになると思います。
・・・それにしても、イギリスのメディアはサルコジさん
を「スクールボーイ」「プレイボーイプレジデント」等
結構キビシク評しています。

ということで、bonne annee!

2007/12/31 (Mon) 15:33 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Dennyさん

> サルコジさんの目指す方向は案外間違っていないのかも
しれませんが


『 サルコジさんの目指す方向 』は,
いわゆるアメリカ的ネオ・コンサーヴァティズムだと思われます。
それが彼の理想なのでしょうね。
一連の改革はそれを確実に実現するための手段ですし。

ただ,”小さな政府”は弱者に厳しい,さらなる格差社会を招くことになるのでは・・・i-230

今年がDennyさんにとって,すてきな1年でありますようにi-265

2008/01/03 (Thu) 13:28 | EDIT | REPLY |   

Denny Johpp  

早速ありがとうございます。東京はぬくいのかさぶいのか
ようわからん天候です。

>ただ,”小さな政府”は弱者に厳しい,さらなる格差社会を
>招くことになるのでは・・・
企業買収防衛の対象がエネルギー、防衛等の業種だそうです。
彼の狙いがわかり始めています。いまのうちからロワイヤルさん
のコメントに注目しておきたいと思います。

2008/01/09 (Wed) 09:24 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Dennyさん

こちら(関西)も,暖冬なのか寒いのか
よく分からない今日このごろです(^-^*)

> 対象がエネルギー、防衛等の業種だそうです。

うーん,そうだったのですか・・・。
ほんと,サルコジさんてば目が離せませんね・・・i-230
ロワイヤルさんと言えば,正式に次期書記長に名乗りをあげたようですが
逆に,うとうとしていたゾウさんたちを起こしてしまったようですよi-277


2008/01/10 (Thu) 00:38 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment