* フランソワ・バイル---裏切りのスパイラル (後編 / ル・モンド紙) 

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François Bayrou

年末までに,あんな記事もこんな記事も訳して紹介したいな,と思っていたのに,この体たらく。でもとりあえず,コレだけは完結させておきます。・・・ところで,サルコジ&カルラの交際報道について,フランスメディア内では奇妙な”居心地の悪さ”が漂っているよう。サルコジさんたら,嫌がっているようなパフォーマンスをしつつも,ちゃっかりカルラとのツーショットをバカンス先でも撮らせてますよね。しかもバカンスの経費はあいも変わらず実業家ヴァンサン・ボロレが丸抱え。前回から何も学ばないどころか,かえってエスカレートしているような。そしてメディアは,目の前に差し出されたけばけばしい色のキャンディーを,嬉々として受け取るか,はたまた猛毒の気配を察知し丁重に拒否するか・・・。その対応の差が,各メディアの聡明さの分かれ目かもしれません。ちなみに今回の件に関し,生放送TV番組でサルコジを擁護すべく熱弁をふるった与党スポークスマン,イヴ・ジェゴ。しかしあれでは,熱弁というよりも,だたの逆切れ。同席していたバケ女史(ル・モンド記者)とバルビエさん(レクスプレス紙ディレクター)もドン引き・・・。では,前回からの続き,完結編です。


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『 フランソワ・バイルと執念深い仲間たち
(後半) 』 
2007/11/30付
Le Monde | Politique | Patrick ROGER (パトリック・ロジェ著)
"A François Bayrou, ses amis rancuniers"  ル・モンド紙 | 政治 |
(*)は訳者による注釈

ジル・ド・ロビアンは,UDF(フランス民主連合)の議員の中で唯一,2002年以降のジャック・シラク大統領の下で大臣を務めた人物だ。彼は,バイルが推進する”独立”主義に異を唱え,別の形で中道派の発展を模索しようと試みた。すなわち,新たな議員クラブ,SEM(行動する社会)の誕生である。『 バイルは側近が異議を唱えたり反論するのに我慢ならなかった。その結果,自分がまわりから孤立すればするほど,自分だけを信じるようになった 』 と,かつて自分が仕えた党首についてド・ロビアン氏は回想する。『 バイルはアカデミックで輝かしい知性の持ち主だが,行動することを忌み嫌う。彼は,言葉で人を魅了する人物なのだ 』

大統領選挙後にバイルから離れたジャン=ルイ・ブルランジュは,バイルの政策は”非現実的”だと批判する。バラデュール会のメンバーである彼は,バイルを”メフィストフェレス” (*注①)に例える。『 メフィストフェレスは壮大にして仰々しい人物であり,そのエスプリは全てを否定する。バイルは多才だが,彼はまるで空想を追いかけて突っ走るF1レーサーだ。彼は自分以外の者が存在することが許せず,セクト的な行動に終始してしまう。自分だけが存在すればよい,というバイルの考えは幼稚でさえある。バイルを愛し,そしてバイルの元を去ったすべての人たちは,今ようやく安堵の吐息をついているだろう。バイルは計算高く,人や社会の原動力となるものを分析することに長けているが,最後にはみずからのエゴイズムのせいで道に迷ってしまった。彼はまるで,モビー・ディック(*注②)を追いかけているうちに乗組員全員を死に導いてしまう,エイハブ船長のフレンチバージョンだ 』

2002年から2007年にかけてバイルのブレーンのひとりであったエルヴェ・モランは,大統領戦の第一回投票の翌日,バイルと決別した。与党に流れた元UDF議員と共に,モランは”新中道”(NC)を立ち上げる。『 私は今でもバイルを尊敬している 』 と今や国防大臣となったモランは言う。『 だが,彼といると,まるで軍艦メドゥーサのいかだ(*③)に乗っているようなものだ。バイルは最後には墓守になってしまうだろう。確かに,この地球上が裏切り者だらけであることは認めざるを得ない。だが,全員が船から降りたとき,その理由をいつかは自問すべきではないだろうか 』

ジャン=マリ・カヴァダは,大統領選が終わってもバイルの側に残った。9月末に行われたUDFの党集会も彼の手によるものだ。彼が数人のジャーナリストに対して,MoDem(民主運動)の最高幹部になりたいと洩らしていたのは,つい最近のことだった。ところが彼は,2008年の市長選選挙ではUMP(国民運動連合/与党)から出馬するというではないか。『 私を非難したければするがいい。ただし,それが許されるのは1995年のあの時(*注④) ,味方を裏切らなかった者だけだ 』 と,この元ジャーナリスト(*カヴァダ)は激しく反論した。『 一国を治めんとするならば,2つのものが必要だ。ひとつは,思慮深い部下。なぜなら,美辞麗句で国を治めることはできないからだ。ふたつめは,党が開放的でダイナミックな活動を続けられるべく引率する力量だ。”民主運動”(MoDem)という党名をバイルに提案したのは私なのだ。彼から少なくとも2回,新党のナンバー2のひとりになってほしいと頼まれた。しかしそれは,毎回条件付きだった。すなわち,”最後まで私についてくると誓ってくれ”と言われたのだ。だが,”いつまでも愛し合おう”と互いに誓うほど,私は若くないのでね 』

『 マリエル・ド・サルネーズ(*注⑤)以外のナンバー2など存在し得ないことに,私はようやく気付いたのだ 』 と,カヴァダは結論を下す。『 バイルと共にいることは,あたかも中世の英雄叙事詩の中に身を置くようなものだ。みんなが負傷し脱落してゆくのを黙って見ていることは,私にはできない。川の対岸に立って,改革の犠牲になった者たちの死体が流されてゆくのをただ眺めているなど,あまりにも子供じみている。それは私には出来ない相談だよ--- 』【 完 】
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 キーワード & 訳注 
*① メフィストフェレス( Méphistophélès )・・・
ドイツに古くから伝わる誘惑の悪魔。その民間伝承にインスピレーションを得たゲーテの戯曲 『 ファウスト 』 では,人間の限界に失望したファウスト博士があらゆる欲望の実現と引き換えにメフィストフェレスを契約を交わし,最後には絶命する。
*② モビー・ディックとエイハブ船長・・・
ハーマン・メルヴィルの小説 『 白鯨 』 の中で,凶暴な白クジラ”モビー・ディック”に片足を食われ,その捕獲に執念を燃やすのが,エイハブ船長。
*③ 軍艦”メデューサ”(またはラ・メデューズ)のいかだ・・・
19世紀初頭,イギリスから植民地コートジボワールを奪還したフランスは,入植者や軍人,役人などを現地に送り込むため,軍艦4隻を派遣。そのうちの1隻”メデューサ”号を率いた王党派貴族,ド・ショマレ( de Chaumareys )司令官は航海経験の不足にも関わらず,船員の忠告をないがしろにする。その結果,メデューサは他の船団とはぐれ,暗礁に乗り上げてしまう。巨大ないかだで161人が脱出するが,15日間にわたる漂流の間,溺死,殺人,カニバリズムなど,いかだ上では凄惨きまわりない光景が繰り広げられ,岸にたどり着いた時点で生存していたのはわずか15人であった。この悲劇は当時のフランスに衝撃を与え,みずからの無知と怠惰により多くの死者を出した司令官ド・ショマレは死刑を宣告されるも,後に禁錮2年に減刑される。漂流するいかだ上の阿鼻叫喚の光景を描いたテオドール・ジェリコーによる絵画は現在,ルーブル美術館に所蔵されている。(参照 : Wikipédiaより )---モラン国防相は,バイルをド・ショマレ司令官に,死亡した部下らをUDFメンバーに例えていると思われる。
*④ 1995年の裏切り者・・・
1995年,エドアール・バラデュール首相(当時は社会党ミッテラン大統領による保革共存政権)はRPR(右派/現与党UMPの前身)を離脱し,UDF(中道右派)の支持を受け大統領選に出馬。ところが,RPRが擁立したジャック・シラクこそが勝利すると敏感に察知したバイル(UDF)は,シラク支持を表明し,大統領となったシラク政権下で大臣ポストを獲得。カヴァダは当時のことを想起し,”裏切り者のバイルに非難される覚えはない”と揶揄していると思われる。
*⑤ マリエル・ド・サルネーズ( Marielle de Sarnez )・・・
UDFを初期から支えた中核メンバーであり,現在は欧州議員。UDFの創設者でありながら,前回の大統領選でサルコジ支持を表明し,さらにUDF党首バイルを批判し憲法院から警告を受けたヴァレリー・ジスカール・デスタン元大統領とは対照的に,彼女は現在までバイルの有能な右腕として変わらぬ忠誠を誓っている。

8 Comments

DennyJohpp  

バイルさんも存在が薄れてきてしまっているのか焦って
いるのか、来年はビミョーなところでは、と思います。

2007/12/31 (Mon) 15:31 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Dennyさん

バイルさん,
従来の与党寄りの中道”右派”から脱却して
ほんとうの”中道”にあってこそ,
MoDemの将来的な存在意義が見出せるような気もするのですけれど。。。

2008/01/03 (Thu) 13:18 | EDIT | REPLY |   

DennyJohpp  

>ほんとうの”中道”にあってこそ,
だこーです。FNの支持が増えないか心配です。

2008/01/09 (Wed) 09:26 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Dennyさん

FN!!
その存在をすっかり忘れてました~(^-^;;)

サルコジさんは各大臣に成績をつけるそうですが,
オルトフー移民相に関しては,国外追放した外国人の数が基準のひとつだとか。
アンチ移民でFNを支持していた人たちは
現在のサルコジ政権にとりあえずは満足しているのかも・・・?

2008/01/10 (Thu) 00:46 | EDIT | REPLY |   

DennyJohpp  

FNも指導者交代のようですし、方針は変えないまでも
方法を変えることになるのでしょうね。

2008/01/24 (Thu) 08:29 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Dennyさん

後任はやはり娘さんのマリンヌでしたっけ?

あの方,大統領選前後からかなりビジュアルを変えて
ソフトFN(笑)路線でがんばってましたよね。

でも,批判されると皮肉や嫌味をしつこく繰り返したり,と
パパ以上にコワイですよぅ~?

2008/01/24 (Thu) 22:48 | EDIT | REPLY |   

DennJohpp  

でも,批判されると皮肉や嫌味をしつこく繰り返したり,と
パパ以上にコワイですよぅ~?

確かに怖いですが、さらりとかわせないようではねぇ・・・。
FNもそう大きくなるという感じではないですね。

2008/01/28 (Mon) 09:23 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Dennyさん

まあ,ル・ペン(父)とマリンヌさん(娘)の恫喝は
ル・ペン家のお家芸みたいなものかもしれませんね(^-^;;)

2008/01/29 (Tue) 00:59 | EDIT | REPLY |   

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