* サルコジ新年演説のレトリックを読み解く (ルモンド紙より)

image by © Le Monde
sarkozy_2drapeaux_lemonde.jpg
Nicolas Sarkozy
1月8日,世界中からなんと600人以上のジャーナリストを集めたといわれる,2時間に及ぶ前代未聞のサル
コジ大統領記者会見。本来ならばこの会見についての記事(の訳)をUPすべきところですが,ル・モンド紙のフ
ィリップ・リデ氏が前回の大統領新年演説をさらに詳しく分析しているので,引き続き紹介したいと思いま
す。・・・となるとこのブログ,以前にもまして記事が後手後手になってしまい恥ずかしいのですけれど・・・。ま,
今年もマイペースにのんびり,じゃなくてじっくりと(うむ)時事を見つめてゆきたいと思います。(苦しい言い訳
だなあ・・・) それに,サルコジさんのハイペースに巻き込まれるのもしゃくですものね?今日の記事はとても
長いので,2回に分けるべきか迷いましたが,勢いで訳します。( * 注: ほんとに長いです・・・)


*   *   *   *   *   *   *   *    *   *   *   *   *   *   *   *


サルコジ大統領の新年演説にみる候補者的レトリックと用心深さ 』 

"Rhétorique de candidat et prudence de président lors des vœux de
M. Sarkozy"
 Le Monde | Analyse | par Philippe Ridet | le8,01,08 2008
ル・モンド紙 | 分析 | 2008/01/08付 | フィリップ・リデ著 |  
(*)は訳者による注釈

大統領選の勝利から8ヶ月,ニコラ・サルコジは選挙中の約束をすべて果たしたわけではなかった。フ
ランス国民はそのことに気付いている。それを正式に認めていないのは,国家元首(*サルコジ)だけだ
った。そして12月31日,サルコジにとっては初めての,フランス国民への新年大統領演説の中で,彼
はそれを認めたのだ。『 たった一日ですべてを成し得るわけではない 』 と,テレビとラジオで同時放送
された,予想よりずいぶん”おとなしい”スピーチの中で,彼は譲歩した。だが,サルコジがまだ大統領
候補にすぎなかった時期に何度もくり返したように,フランス国民に”すべてが可能であると確信させ
る”ために,彼は”すべてを実現する”と約束したのではなかったか。この大統領選でのスローガンは,
彼によれば”現在進行中”だという。

論議を巻き起こしたエジプトでの豪勢なバカンスの名残りを感じさせまいとするかのように,わずかばか
り日焼けした顔で,サルコジ氏はエリゼ宮2階の執務室の奥に陣取り,演説を始めた。そして,その
演説の大部分を,”(*改革が)すみやかに行われていないと感じる”国民と,”早急すぎると感じてい
る”国民の双方に対し,政府の手段を例証し,その選択を正当化することに費やした。

まず前者(*改革が遅れていると感じているフランス国民)に対し,国家元首サルコジはその慎重さの言い訳と
して”労使間の対話と交渉の必要性”を挙げ,”強硬手段”は政府の望むところではない,と強調し
た。そして後者(*改革がすみやかに行われていないと感じるフランス国民)に対しては,”フランスが国
際社会からこれほどまでに遅れをとって”いる以上,”フランス国民が未来を手中に収めんと欲するな
らば,のんびりしている場合ではない”として,改革を急ぐ必要がある,と説いた。

そうすることで,サルコジ氏は大統領就任以来,彼にのしかかっていた二重の批判に耳を傾ける用
意があることを示した。与党の一部,すなわちMedef(*メデフ=フランス経団連)は,”サルコジ改革
は彼の野心に反して手ぬるい”と批判する。しかし,フランス国民の多くは,サルコジ改革はその対象
を広げすぎており,改革も早急すぎると感じているのだ。『 改革の第一段階はすでに変化をもたらし
つつある 』 と国家元首は強調した。そうして,共和国大統領サルコジは自分の過去と未来の政策
を正当化すべく,最初の改革のいくつかが成果をあげられず,もしくは次善の策に成り下がってしまっ
たことを,その”緊急性”のせいに帰した。

彼の言う”緊急性”とは,”野党に開かれた政治”というスローガンのもとに,党派間の対立をなくす”
緊急性”であり,または,税制改革と社会福祉制度改革(その成果はいまだ表れていないようだが)
への着手の”緊急性”だ。それはまた,購買力向上,大学自治,最小限の公共サービス(*①),国
家の近代化,そして新欧州憲法制定の”緊急性”でもある。たとえ,カダフィ大佐のパリ訪問や,ウラ
ディーミル・プーチン露大統領へ贈った賛辞,シリアとの対話姿勢など,サルコジの最初の外交政策
が非難を浴びたとしても,それは”フランスがあらゆる人たちと対話する”ための”緊急性”によるものな
のだ,と彼は説く。

ところが2008年,実はサルコジ氏はそれをはるかに上回る野心的な展望を胸に描いている。『 改革
の第二段階に着手する 』 と彼は続けた。そして国家元首は口調を強め,”文明の政治”( une
politique de civilisation
)と”新ルネッサンス”(une nouvelle renaissance)を高らかに宣
言したのである。特に後者の表現は,ポンピドゥー元大統領から拝借したものであり,去年の9月初
旬,全教職員に宛てた”教職員への手紙”の中ですでに一度(その言葉の意味を説明することなく)
使われている。また,サルコジによれば,”文明の政治”は文化,教育,アイデンティティー,人権,環
境問題,資本主義経済の道徳向上を意味するという。そして今度は,あたかもド・ゴール将軍を想
起させるかのように, 『 フランスは手本を示さなければならない 』 と述べ始め, 『 それは,全世界が
フランスに対して常に待ち望んできたことなのだ 』 と続けた。国家元首のその呼びかけに最初に応え
たのは,首相,フランソワ・フィヨンだった。フィヨン首相は”文明の政治”の実現に向けて奮起し,”フラ
ンスが世界経済レベルでより勝者になり,フランス国民にさらにふさわしい国となり,世界で今以上に
尊敬され,常に国際社会で主導権を握るために”,フランスを根本から改革する覚悟があると表明
した。

プロンプターに映し出されるスクリプトを読み上げたとはいえ,生中継での放送が続く中,サルコジは
演説原稿を徹底的にカスタマイズした。”責任の所在が自分にある”ことをより分かりやすく強調する
ために,彼は演説の中で45回も”私(je)”と発言したのだ(*③)。『 私はリスクを冒した。そして,私がミ
ス犯したこともあった 』 と彼は認めている。そのついでに,彼はあまつさえ自身の過去の言葉さえ引用
し,今やすっかり有名になった 『 私はあなた方を裏切らない,私はあなた方に嘘をつかない 』 という
フレーズを,視聴者に向けて再び繰り返したのである。

ところが実際は,年末恒例の大統領演説の中で,サルコジが曖昧さを感じさせなかったわけではな
い。その雄弁さが大統領候補時代のままだとするならば,その慎重さは確かに大統領のものであっ
た。ゆえに,”世界的な経済危機”という困難な状況にもかかわらず,”私が着手した改革は,2008
年度に成果を実感できるはずであろう(devraient)”と,わざわざ条件法を用いたのではないだろう
か。だからこそ,同様に ”実行された改革がフランス国民の目に見える形で日常生活レベルに反映さ
れるまでには,まだまだ多くの課題が残っている”と,いつになく謙虚に認めたのだろう。

1995年,ジャック・シラク前大統領は初めての新年演説で,こう述べている。 『 我々はまだ道のスタ
ート地点にいる。しかしそれは,正しい道なのだ 』 と---。サルコジ氏は今回の演説で,そのフレーズ
を拝借すべきであったろう。
 【完】

*   *   *   *   *   *   *   *    *   *   *   *   *   *   *   *


 キーワード & 訳注 
*① 大学自治 ( l'autonomie des universités ) ・・・
過去記事 『 サルコジ的メソッドの代償【後編】
のキーワード欄①参照。
*② 最小限の公共サービス ( le service minimum )・・・
同上記事のキーワード欄②参照。
*③ ”私”という言葉が45回も出てきた・・・
演説の後,このことを最大野党フランス社会党のフランソワ・オラン
ド書記長が揶揄して,サルコジを ”président (du) moi-je”(モワ・ジュ大統領=”私が私が”大統領)とあ
だ名を付けた。

4 Comments

DennyJohpp  

きのうウェブをみたら「フランス24廃止を」。
・・・大丈夫なのでしょうか?フランコフォン自体の
力をあげようというのかどうかわかりませんが・・・?

2008/01/22 (Tue) 08:02 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Dennyさん

フランス24・・・。
その存在をつい先ほど知ったばかりでした(^-^;;)

ちょうど,とある弁護士さんのブログ(フランス語がちりばめられている)の
ブックマークにあったのです。

ほんと無知で恥ずかしいです・・・。
みなさん,いろんなところから情報収集されているのですね!
でも廃止なんですか??

2008/01/24 (Thu) 22:34 | EDIT | REPLY |   

DennyJohpp  

廃止したいらしいようです<フランス24
でも、一応英語は必要なもわかっていると思いますが・・・。

2008/01/28 (Mon) 09:25 | EDIT | REPLY |   

bébépiupiu*  

i-77 to : Dennyさん

それにしても,
どうして廃止したいんでしょうか・・・?

2008/01/29 (Tue) 01:00 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment