【ル・モンド紙】 カンヌ映画祭 / 北野武「アウトレイジ」批評


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賛否両論だったという、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された北野武監督の「アウトレイジ」。ル・モンド紙ではどのように評価されているのか、ちょっと読んでみました。


"Takeshi Kitano rate son retour au film de yakuza"(原文)
2010/05/18 | Éditorial | Le Monde |
「 北野武、ヤクザ映画を引っさげての映画界復帰に失敗 」 | ル・モンド紙  |
Jacques Mandelbaum著 | (*)は訳者による注釈  

日本の現代映画の星である北野武のファンすべてが、この映画を待ち望んでいた。 それは名監督の復帰への賞賛以外に、ある別の理由があったからだ。 すなわち、「あの夏、いちばん静かな海。」(1991)、「ソナチネ」(1993)、「キッズ・リターン」(1996)、そしてヴェニス映画祭で金の獅子賞を獲得した「HANA-BI」(1997)といった傑作を生み出した北野が偏愛するヤクザ映画は、彼自身によって10年間ほったらかしにされていたからだ。

これらの「昇華されたバイオレンス」映画は、未知の境界線に位置していたこのジャンルを、詩、瞑想、バーレスクへと導いた。ところが2005年、監督は人物像と作品の極意を追求し、 「TAKESHIS'」(2005)、「監督・ばんざい!」(2007)、「アキレスと亀」(2008)から構成される穏やかなコメディ三部作を作成し、作品の傾向を劇的に変えた。

誇張されたヤクザ映画「アウトレイジ」は、北野監督の映画ビジネスへの大々的な復帰であったが、それは期待されたものでもなければ、待ち望まれたものでもなかった。映画のチケット代を払うまでもないだろう。なぜならそれは、グラン・クリュ級の北野の復活というよりも、前述した「期待されていないもの」と「待ち望まれていないもの」の寄せ集めに他ならないからだ。

意図的に錯綜したストーリーは、多くの登場人物と共に、珍妙に繰り広げられる馬鹿げた言動とバイオレンスのエスカレートの中で、暴力団の世界を皮肉っている。強大な暴力団組織の会長であり権謀術数に長けた頑迷な老人が、自らの影響力をさらに強固なものとするため、内輪の流血沙汰の不和を大胆に操る。

”純粋な殺戮ゲーム”

組織の地味な組長を演じた北野は、組織のあらゆるヒエラルキーを巻き込んだ裏切りの連続と、いかにも失敗しそうな策略を詳細に描写するのを楽しんでいるようだ。 最も弱い者が常に犠牲となることが原則だ。暴力団組織の仁義と友愛の掟から悪趣味で派手な服のみを浮き上がらせる、この悪意に満ちた弱肉強食の世界は、 日本社会に対する批判として解釈することもできよう。

しかし、この作品がいかに面白くとも、軸となるべき土台が脆く、しっかりと具現化されていないために、過度な誇張はただの殺戮ゲームとなってしまった。これがバイオレンス映画のへの回帰というならば、「アウトレージ」はこのジャンルに対する北野監督の倦怠感を表していると言えるだろう。 (終) 
( 拙訳 : bébépiupiu )
 

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誰からも好かれる映画よりも、少しくらい物議を醸し出すような賛否両論の映画の方が面白そうです。

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