*ベタンクール=ヴルト事件(3) 【ルモンド紙】 検察官と裁判官の衝突

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フィリップ・クロワ検事

ヴルト=ベタンクール事件の指揮を取るのはてっきり予審判事だと思っていたら、なにやら検事が出てきて、予審判事に指揮権を譲らないのだとか。フランスの裁判制度は日本とは異なる部分も多く、特に「予審判事」制度は特徴的です。かつて留学中に判例分析の講義で、「予審判事は大統領よりも強大な権限を持っている」と教わったのですが、事件の捜査を一手に引き受け指揮管理する予審判事の判断によって、事件の捜査方法や解決手段も大きく左右されるため批判は多いようです。とはいえ、検察官と異なり、政治権力から完全に独立した予審判事の意義は少なくないはず。


”Le procureur de Nanterre conserve la main sur le dossier Bettencourt”(原文)
  2010/06/04 | Éditorial | Le Monde |
  「 ナンテール地方検察局の検事、ベタンクール事件の指揮権を独占」 | ル・モンド紙  (*)は訳者による注釈  


7月16日、リリアンヌ・ベタンクール夫人の近親者を拘留した後に釈放したナンテール大審裁判所のフィリップ・クロワ検事は、この事件を予審判事に付託しないことを決定し、事件の指揮を独占するつもりのようだ。

フォトグラファーであるフランソワ=マリ・バニエ、ロレアルの相続人(*ベタンクール未亡人)の財産管理人パトリス・ドゥ・メストル、ベタンクール未亡人の税金対策専門の弁護士、ベタンクール未亡人が所有するセイシェルのアローズ島の管理人カルロス・ヴェジャラノは、警察税務課により36時間拘留された後、金曜日の夜に釈放された。彼らは、2009年から2010年の間にベタンクール未亡人宅で内密に録音された脱税対策を想起させる会話記録の内容および、億万長者夫人(*ベタンクール未亡人)の財産を管理する会社に採用されたフロランス・ヴルト夫人が果たした役割における利害関係に関して、事情聴取を受けた。

“高まる不穏な空気”

フランス法務省の管轄下にあるフィリップ・クロワ検察官が指揮するナンテール地検は、現段階でこの4人の人物を予審判事に付される予審の証拠調べ開始のために引き渡すことができるのだが、そうしないことを決定した。それに対し、「政治権力から独立した立場にある裁判官に事件を託すべきだ」との声が、ルモンド紙のインタビューに答えた元裁判官エヴァ・ジョリー女史をはじめとして、上がっている。

ナンテール大審裁判所において、(*ベタンクール未亡人の)心神耗弱状態の濫用容疑に関連する事件(*注①)の予審補充措置(*第一審の予審裁判所とは別の刑事裁判所が、真実発見に有用と判断する補充捜査のあらゆる行為を命じる措置。三省堂フランス法律用語辞典より)をそれぞれ担当するクロワ検察官とイザベル・プレヴォスト=デスペレス判事の間に漂っている緊迫した雰囲気は、今回新たにクロワ検察官が今回の事件の捜査を独占的に掌握したことで、ますます悪化した。従って、Mediapart(*今回のスキャンダルで様々な情報を暴露した仏インターネット情報サイト)によると、ナンテール地方裁判所の検察官(*クロワ氏)は金曜日、内密に録音された会話記録の情報を女性裁判官(*プレヴォスト=デスペレス女史)に提供することを拒否したと見られている。

“喜ばせるために”

秘密裏に録音されたこの会話記録は、億万長者未亡人夫人の自宅で録音されたものだが、ヴルト雇用相夫人(*フロランス)と当時予算大臣だった夫ヴルト氏の利害関係の利害の対立を疑わせるものである。

ドゥ・メストル氏は拘留中に、エリック・ヴルトから「“妻のキャリアについてアドバイスをいただきたいので、妻に会ってもらえないだろうか”と頼まれた。ヴルト夫人は自分の現在までのキャリアにあまり満足していないようだった」と語ったことが、弊紙が公表した「事情聴取記録の抜粋」で明らかになっている。

しかし、ヴルト氏の顧問弁護士であるジャン=イヴ・ル・ボルニュ氏は以下のように反論する。「2007年、ドゥ・メストル氏は適任者を探しており、そのためにヘッドハンターを雇ったほどだ。HEC(*リエージュの著名な経営ビジネス専門学部)出身であるヴルト夫人は当時大銀行に勤務しており、まさにその資質は十分であった」

しかし、内密に録音された会話記録の中で、4月23日にドゥ・メストル氏はヴルト大臣を“喜ばせるために”、ヴルト夫人を採用したと述べている。(終) 
( 拙訳 : 管理人 )

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