【ルモンド紙社説】 ベタンクール=ヴルト事件(4) ---指揮権を検事ではなく予審判事に委ねるべきである

image by © Le Monde

フィリップ・クロワ検事

政界や経済界の有力者との関わりが疑われる事件の場合、その審理が司法に委ねられた時から、いかなる政治権力の圧力をも受けることなく公平な手続きによって真実の追究がなされるよう見守るのも、市民(とメディア)の務めなんだな、と改めて考えさせられた事件です。


”L'histoire dans l'histoire : le tribunal de NanterreLe”(原文)
  2010/07/22 | Éditorial | Le Monde |
 「 もう1つのストーリー : ナンテール大審裁判所」 | ル・モンド紙  | 社説 
  (*)は訳者による注釈  

司法権を粛々と行使するための条件は、ナンテール大審裁判所において明らかに欠けているようだ。疑いを抱いている者たちに対し、ヴルト=ベタンクール事件の最新エピソードは残念ながらそれを裏付けることとなった。

ナンテール大審裁判所第15部部長であるイザベル・プレヴォスト=デスペレス予審判事と、フィリップ・クロワ検事の持久戦を、どう理解すればよいというのだろう。ヴルト=ベタンクール事件のキーパーソンである証人、すなわちリリアンヌ・ベタンクール未亡人の元会計係であるクレール・ティブー女史を、わずか2週間差で予審判事と検事がそれぞれ証人尋問をしたことで、この事件の指揮に関してさらに疑問が呈されることとなった。

フランス警察の内部抗争が万延した1970-1980年代を経て、2010年は裁判官と検察官に引き裂かれた骨肉相食む争いの年代となるのだろうか。

司法は、効率性を重視した代償として、その信用を失った。まず第一に、この事件をただちに別の司法機関に託すべきである。すなわち、ナンテール大審裁判所の管轄外に置くべきだ。(*ベタンクール未亡人宅で)内密に録音された会話記録そのものに、クロワ検事の名前が事件の主要人物として録音されている。大統領との距離が近いことで知られるこの検事による陰謀疑惑を極力回避すべく、事件をナンテール大審裁の指揮からは外すことは必須だろう。数年前から続くフィリップ・クロワ検事とプレヴ ォスト=デスペレス女性判事とのあからさまな内部抗争は、両者の事件に対する動機に暗い影を投げかけており、事件を個人的な目的に利用しかねない明らかなリスクを伴うものである。

2つめの重要な点は、この事件を、あらゆる権力のヒエラルキーから独立した存在である裁判官に託す以外に、司法は信頼を取り戻すことはできない、ということだ。つまり、クロワ検事が弊紙のインタビューで答えたように、「外部からのいかなる圧力にも屈せず自由な見地で捜査する」---えてして我々も検事は然るべきと思いがちだが---と信条表明するだけでは不十分なのだ。

検察官の地位にある限りその疑惑(*権力との癒着)からは逃れられないが、それでもその疑惑を回避すべく努力すべきだろうか。クリアストリーム事件におけるパリ地検のジャン=クロード・マラン検事のように、クロワ検事は司法理論という外見の罠にはまってしまった。つまり、クロワ検事が導き出す結論は、それが法に基づいていようがいまいが、常に疑惑というフィルターを通して解される、ということだ。

最後の重要な点として、当該事件の複雑性ゆえに、容疑者に何の保証もない公判前整理手続きを長引かせる結果となった。確かに、予審判事による事件の審理はしばしば長期に渡るが、一方で司法はその迅速性を犠牲にする代わりに、異論の余地のない明白な結論を導くことができる。裁判官がある人物を審理にかける際、 その人物に証拠を開示することで、事前に攻撃防御方法を準備できるように配慮がなされている。すなわち、予審判事による審理は、欧州人権裁判所の求める公平な対審制の手続きを尊重した制度なのだ。しかし、ニコラ・サルコジ氏は、司法改革に予審判事制度の廃止を盛り込むつもりである。(終) 
( 拙訳 : 管理人 )

0 Comments

Leave a comment