【ルモンド社説】 フランスが人種差別国のレッテルを貼られようとしている

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Nicolas Sarkozy

今回は、ル・モンド社トップ、エリック・フォトリノ氏の社説です。サルコジ大統領が、ロマ民族のキャンプの強制撤去に着手したことで、人権団体、野党はもちろんのこと、カトリック教会、国連まで懸念を表明し始めました。確かに、フランス国内で空き地を(時に)不法占拠しながら各地を転々とする移動民族の中でも、ロマ民族の存在はフランスにとって頭痛の種ですが、その解決策自体が一時的なものに過ぎないばかりか人種差別的であり、彼らの人権を無視したものだと問題になっています。


”L'amour de soi et la haine des autres”(原文)
  2010/07/29 | Éditorial | Le Monde |
 「 自身を愛し、他者を憎む 」 | ル・モンド紙  | 社説 | Eric Fottorino著
  (*)は訳者による注釈  

都市犯罪は、ずいぶん以前から右派も左派も克服できずにいる厄介な問題である。人に対するこの犯罪は、まず最も弱い者が被害者となり、彼らに不公平感とフラストレーション、さらには無力な政府に対する怒りを増幅させるものである。7月30日にグルノーブルで行われた演説で、サルコジ大統領は衝撃的かつ攻撃的な治安対策を始動させることで、自らの政策の失敗を打ち消そうとしている。

犯罪に対する「戦争」、「外国にルーツを持つフランス人に有されるフランス国籍の価値の低下」---すなわちサルコジ大統領は、移民と犯罪の間に因果関係を打ち立て、ブリス・オルトフー(*内務大臣)は、移動民族が、実はメルセデス・ベンツに乗っていると決め付けた。同大臣は法の基本概念に反し、「有罪と推測される」と発言し、小審裁判所から「人種に対する侮辱罪」の判決を受けたが、ナントで窃盗・強姦犯・悪霊払い師・多重婚姻者という、おあつらえの標的を見つけたのである。

それは、2007年、大統領候補だったサルコジが「住居の中で殺される羊たち」(*注①)を引き合いに出したように、すべてのイスラム教徒に汚名をなすりつけるのに十分だった。危機に瀕している人々を助けると見せかけて、実際は来たる2012年大統領選挙の再選を確実なものとすべく策を練る、国家元首(*サルコジ)の選挙第一主義が見え隠れする。国連もフランスにおける外国人排斥感情の高まりを危惧しており、いかなる目的も、これらの政策を正当化することはできない。

「ゴロツキども」、「ケルヒャー」(*注②)といったサルコジ製の言葉と、「フランス人のアイデンティティー及び移民省」の創設以来---この省の創設は、移民の存在がフランス人のアイデンティティーを脅かすという関連付けを示唆するものであるが---、サルコジ大統領は「壁」を作った。すなわち、偏見という名の壁、先入観の壁、フランス国内に存在する“敵”という壁である。それは、「彼ら」と「我々」の間に存在する不信感の壁、“本当の”フランス人によるフランスと、窃盗犯でもなければ殺人犯でもないのに「外国人」という烙印を押された者たち全ての間に存在する壁だ。我々自身の中に存在する愛と憎悪の距離は、かつてないほど近付いている。しかし、スケープゴートを祭り上げたところで、都市犯罪やヴルト=ベタンクール事件が忘れ去られることは決してないのだ。

その結果がこれだ。議論を巻き起こし、思考を麻痺させる武器としての言葉が選択された。それらの衝撃的な言葉と行動に気を取られた我々は、(*ジプシーたちが占拠していた)違法キャンプの撤去のことしか話題にしなくなった。権力により、あらゆる知的な考察への扉が閉ざされてしまったのだ。政府の提案に対し、我々は抗議することしかできない。退去、排除という言葉。悪の真の原因を突き止めることへの拒否。人々を路上に放り出し、抑圧政策に頼り、教育的な政策を縮減する。それこそ、犯罪に打ち勝つための、最もしてはならない方法でなないだろうか。

この“屈辱“という名の政策のせいで、公的機関が実施する業務のイメージが悪化している。フランスは人種差別的な国ではない。だが、外国人排斥感情を活性化させることで、政府は我々フランス国民の基本理念と価値観をないがしろにしている。今一度、憲法第一条により、フランス共和国が「すべての国民は法の下に平等であり、その出身、人種、宗教によって差別されない」ことを保障していることを喚起すべきであろう。(終) 
( 拙訳 : 管理人 )

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 キーワード & 訳注 
①「住居の中で殺される羊」・・・
2007年、仏民放テレビ局TF1が製作したニコラ・サルコジと市民の直接対話番組で、アルジェリアにルーツを持つ少女の質問を受けて、サルコジは次のように発言した。「私は右派の中で、移民選別政策を打ち出した初めての政治家だ。誰もフランスに住む義務はない。フランスを愛するならば、フランスを尊重すべきだ」「一夫多妻制やFGM、住居内で羊の喉をかき切る行為を行ってはいけない。フランス共和国のルールを遵守すべきだ」 テレビ局はこのシーンをカットして放映したが、サルコジの移民に対する差別的発言として問題になった。
①「ケルヒャー」・・・
Kärcher(ケルヒャー)はドイツの高圧洗浄機、スチームクリーナーのメーカーであり、高圧洗浄機そのものも指す。2005年、パリ近郊のラ・クルヌーヴ市(La Courneuve)で、対立する若者グループの銃撃戦に巻き込まれ、11歳の少年が死亡した。当時内務大臣だったサルコジは現地を訪れ、住民たちに「ラ・クルヌーヴ(の犯罪者たち)をケルヒャーで一掃する」と発言し、論争を巻き起こした。

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