【ルモンド社説】 EU、ロマ人問題でフランスを非難

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「ロマ人問題 : EUの被告席に座らされたフランス」( Rue89の風刺画より)

紹介するのがすっかり遅れてしまいましたが、フランス政府が仏国内の移動民族ロマ人の一部を強制退去処分にしたことで、EUから猛烈な批判を受けてます。特に欧州委員会の副委員長を務めるヴィヴィアンヌ・リディング女史は、仏政府によるロマ人強制退去を第二次世界大戦中のユダヤ人排斥に例え、サルコジ大統領もすっかりへそを曲げてしまいました。(彼女はその後、発言を撤回し謝罪していますが)

上の風刺画の、大きな鷲鼻の男性は、サルコジさん。サルコジさんが投げ出そうとしている車は、ロマ人が移動の手段兼、住居として使うキャンピングカーです。サルコジさんを攻撃している黄色い星は、もちろんEUのシンボルです。念のため星を数えてみたら、14個。ちなみにEUの旗の星は、15個です。つまり、15の星からフランスを除いた14、ということですね。うーん・・・芸が細かい。(風刺画は近いうちに削除します。怒られそうなので・・・)
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”La France, l'Europe et les Roms”(原文)
  2010/09/10 | Éditorial | Le Monde |
 「 フランス、欧州、そしてロマ人達 」 | ル・モンド紙  | 社説 
  (*)は訳者による注釈  

現在問題になっているロマ人をめぐる状況において、フランスは確かに間違っている。

今年の夏、仏政府トップは共通の見解を持っていた。すなわち、移民と犯罪を同一視し、1つの共同体全体、つまりロマ人や移動民族(ジプシー)の一部による犯罪を彼ら全体の責任と考えていた。このやり方を、アマルガム(意図的混同)と呼ぼうが、スケープゴート的手法と呼ぼうが、結果は同じだ。つまり、このような手法は非難されるべきものであり、許されないものである。

また、数週間前に(*仏政府によって)決定された、フランス国内に定住しているロマ人の一部に対する強制退去が、欧州人権法に照らし合わせて合法であるかも検討すべきだ。この強制退去のニュースで、国際的なフランスのイメージは損なわれしまった。ニコラ・サルコジが次回の選挙を視野に入れてこのような強行な政策を打ち出したことは、バカンス明けの欧州議会再開を目前に控えた彼の肩に重くのしかかるだろう。

9月9日、欧州議会はフランス政府のロマ人政策について、確固たる論拠による、しかし法的拘束力のない声明を発表し、フランス政府を糾弾した。それに対し、移民・同化および国家アイデンティティー相であるエリック・ベッソンは、欧州議会のこのような強権的手段を非難しなければと、という気持ちに駆られたようだ。だが、欧州の巨大な機関を軽視した彼の発言は、フランスの評判を貶めるだけだった。

ニコラ・サルコジは、来年のG20(主要国首脳会議)で議長を務める前に、欧州委員会で良識ある提案を行い、まずは欧州が一致団結するよう模索している。そのような中、フランスと欧州の目下の関係は幸先が良いとは言えまい。

だが、フランスに対する批判はここまでだ。なぜなら、ロマ人政策において、フランスがすべて間違っているわけではなく、実際はそれに程遠いからだ。ロマ人を強制退去させているのはフランスだけではない。たとえば、ドイツ、スウェーデン、イタリアも同様の政策を実施している。なぜなら、欧州担当政務次官であるピエール・ルルーシュ氏が我々ルモンド紙(9月10日付)で述べているように、EUは今、目を逸らし続けるだけでは決して解決できない問題に直面しているからである。

2007年、ルーマニアとブルガリアをEUに迎え入れた以上、EUはもはや見てみないふりをすることはできない。つまり、ルーマニアとブルガリアが数百万のロマ人を抱えているという問題を、EUが引き受けたのだ。ロマ人がのけ者にされ、市民として認められず、人種差別とあらゆる攻撃の対象にされている現状は、実に遺憾だ。

そして今、晴れてEU市民となった多数のロマ人たちは、EU加盟国の中でも最も豊かな国に渡り、できるかぎり多く稼ごうとしている。その結果、ポルト・ディタリー(Portes d’Italie ;パリとパリ郊外の境界に位置する地区)や、フランス国内のあちこちで、スラム街が再び出現し始めた。家財の一切合財を詰め込んだほったて小屋に家族で住みつき、フランスに溶け込もうと報われない努力をするロマ人たち。この現実から目を逸らすことができるのは、呆れるほど無責任なラディカル・シック的思想(*注)の持ち主に他ならない。そんなことで、ロマ人の未来は決して救えない。

ルルーシュ政務次官が提唱するように、EUはロマ人に対する「緊急計画」を実施すべきだ。だが、まずは彼らを今住んでいる場所から追い出さすことなく援助することが、優先事項だ。そして、ルーマニアとブルガリア両国が自分たちの責任としっかりと向き合うよう、促すべきであろう。
以上
 ( 拙訳 : 管理人 )

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 キーワード & 訳注 
①Radical-Chic(ラディカル・シック)・・・
富裕層やセレブリティ、アーティストなどが、左派的な人道的思想を、その真の趣旨を理解することなく、ただファッションとして支持すること。

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